日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【搭乗記】TOK/BV103(新潟/札幌丘珠)


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便名 : TOK/BV0103
日付 : 2024/03/xx
機材 : ATR72-600
区間 : 新潟(KIJ)14:15→札幌丘珠(OKD)15:55
所要時間 : 01:40
区間マイル : 369
搭乗クラス : 普通席
運航 : TOK(トキエア)

本当に就航するやしないやで大分やきもきさせられた、新潟の新興航空会社「トキエア」。数度の延期を経て、ようやく2024年1月に就航したので、一度利用してみることに。

当初は仙台線だなんだと話題になっていたが、最初は新潟と札幌丘珠を結ぶ1路線でスタートし、現在は週末を中心に週4日、1日2往復の規模で運航している。将来的に短距離離着陸型のATR42-600Sが入れば、新潟と佐渡なんかを結ぶ路線も開業する予定。

(公式サイトはこちら)

tokiair.com

この日は朝に大宮から新潟までノンストップの上越新幹線「とき311号」で新潟駅に到着。駅近くで昼食を摂り、空港リムジンバスに乗って空港までやってきた。こちらの方が以前利用した万代口からの路線バスと比べると10分ほど所要時間が短い。

(路線バスについてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

新潟空港 ターミナル外観

新潟空港/ 何か街でイベントがあるようで大混雑

トキエアのチェックインカウンターはJALフジドリームエアラインズの並びに開設されているが、本拠地空港にしてはかなりスペースが小さめ。自動チェックイン機の類はなく、カウンターに立ち寄らずにWebチェックインか、有人カウンターかといった感じの2択。

新潟空港 トキエアのチェックインカウンター

新潟空港/ ターミナル西端に開設されている

現在就航している丘珠空港はターミナルに直結したJRや地下鉄の駅はなく、空港からの公共交通機関といえば地下鉄東豊線栄町駅、JR札幌駅へ向かうバスのみだが、このバスについて就航から2ヶ月間は無料で利用できるチケットがプレゼントされるキャンペーンが実施されている。どうやってチケットを入手するのかと思えば、どうやら機内で客室乗務員さんに声をかけると受け取ることができるらしい。

(丘珠空港のバスについてはこちら)

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新潟空港 トキエアのキャンペーン案内

新潟空港/ キャンペーン案内は欠航案内に隠されていた

ちなみに今回搭乗した日の初便は丘珠空港の天候を起因とした機材繰りで欠航になっていたようなのだが、どうやらこれにかかる便変更等の対応はコールセンターのみらしく、ホワイトボードに電話番号が記載されていた。LCCではよく見る対応だが、同社の目指しているのはLCCなんだろうか。

これに限らず、2024年3月時点における同社の情報開示やUIが今ひとつ。運航状況はトップページに全便まとめてスクロールするだけではなく、専用のページを用意するとか、もう少し分かりやすくしてほしい。

新潟空港 欠航にかかる手続の案内

新潟空港/ 手続はコールセンターのみで対応の模様

さて、出発までもう少し時間があったので展望デッキ(入場料100円)に上ってみると、ちょうど折り返し103便となる機材が到着したところ。こうして上から俯瞰して見てみると、同社は大手2社と比べて飛行機の周辺に人がえらく多い。この人材難の時代に人が沢山いるのはいいことなのだが、経営的には大丈夫なんだろうか。そんなに余裕はないと思うのだが。

新潟空港 トキエアのATR72-600型機

新潟空港/ 機体周りの人数がやけに多い

このとき近くのスポットには海外航空会社のA319型機が駐機していた。A320シリーズの中では全長の短いサイズで、ややずんぐりむっくりに見える。標準座席数は120席程度とのことなので、ボーイングの飛行機で言えばB737-700と同程度ということになるだろうか。過去にはこれより更に短いA318というのもいたものの、流石に小さすぎたか80機程度しか生産されなかったらしい*1

新潟空港 エアバスA319型機

新潟空港/ 少し小ぶりなA319型機

この日の搭乗口はA。隣の搭乗口からは14:00にpeachの大阪関西空港行きが出発するとあって、搭乗待合室は多くの乗客でごった返していた。

そういえば、同社のチェックイン締切時刻を少し過ぎたタイミングで血相を変えて走ってくる乗客?がいたものの、勿論搭乗することはできず。LCCは特に時間に厳密なのだから、時間に余裕を持っておきたいところ。

新潟空港 A搭乗口の電光掲示板

新潟空港/ 20分後にANAの札幌千歳行きが控える

売店を見てみると、新潟名物の「バスセンターのカレー」絡みの商品や米菓などの品揃えが多め。書籍コーナーを見てみると、首都圏から書籍が1日遅れになる旨の掲示が張り出されていた。近頃書籍の発売日を心待ちにするようなことも無くなってしまったが、他の地域ではどのくらいのタイムラグがあるんだろうか。

新潟空港 売店の書籍類に関する案内

新潟空港/ 書籍は首都圏より1日遅れ

しばらくして搭乗開始。同社の機材はプロペラ機のATR72型機で、機体後方から乗り込む形式。搭乗時には「機体後方に滞留すると機体が尻餅をつく可能性がある」旨のアナウンスが何度かされていたが、そんなにシビアなバランスなんだろうか。それもあって、搭乗は2回に分けて、機体前方の座席を指定した乗客から改札していた。

新潟空港 トキエア103便 ATR72-600型機の機体外観

新潟空港/ 胴体の長いATR72-600型機

同社の所有する2機のうち、今回は初号機のJA01QQでの運航。もう1機はターミナルを挟んで向こう側の駐機場に停まっていた。この日は1便目が機材繰りで欠航したようなのだが、2号機は運用できなかったのだろうか*2

ともあれ搭乗する訳だが、至近距離で尾翼を見上げられるのは機体後方から乗り込むこの機材だからこその特徴。紺地に白のロゴが入った機体はどうにもルフトハンザっぽいな、というのが個人的な印象。「TOKI」の「I」の部分は太陽と月だろうか。

新潟空港 トキエア103便 ATR72-600型機の機体外観

新潟空港/ 機体後方から乗り込むのが特徴

機内は座席がグレー地で、年中クリスマスの天草エアラインと比べればかなりシンプル。座席は割と硬めで、欧州の乗用車と似た座り心地。向こうは硬めの座席が好きなんだろうか。

この日は午前中の初便が欠航した振替客が多くいたからか、満席とまではいかないまでも程々の搭乗率。これが振替客がいなかった場合、どの程度の乗り具合だったのかは気になるところ。

(天草エアラインについてはこちら)

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トキエア103便 ATR72-600型機の座席

トキエア103便/ 座席はグレーで大人しめ

この日は後方窓側座席の12E。JALグループはAC/HK、ANAグループはAB/CDの座席割だが、トキエアはAB/DEの設定。横4列の飛行機でE席が窓側というのも珍しいが、将来的に横5列の飛行機を導入する予定でもあるんだろうか。

前述の通りATR機は出入口が後方にあるので、降機する際は後方に搭乗した乗客から降りていくことになる。そもそも飛行機が小さいからどこに座っても大して待つことはないが、少しでも急ぐ場合は機体後方の座席がおすすめ。

枕カバーの不織布には新潟県のディーラー、新潟トヨタ自動車の広告が入っている。FDA(フジドリームエアラインズ)なんかでも枕カバーに広告が入っているのは見かけるが、お菓子やお茶の会社が多く、自動車ディーラーというのは見たことがないような。

トキエア103便 ATR72-600型機の座席

トキエア103便/ エンジンより後方の12E座席

新潟トヨタ自動車の広告は枕カバーのみならず、ゴミ袋(エチケット袋)にも入っている。トキエアは同社に限らず、新潟県内の40社以上が出資し、また新潟県や県内の地方銀行が融資をしているなど、新潟県や県下の企業が一体となって後押ししている。

トキエア103便 ATR72-600型機のエチケット袋

トキエア103便/ 新潟トヨタ自動車とのタイアップ

この日は就航からもう1ヶ月以上が経過していたのだが、改札を抜けて飛行機へ向かうまでの間にビニールの手提げ袋を手渡された。座席について袋を開けてみると、中には飲み物と米菓、箱入りの飴が入っていた。のちに機内アナウンスで紹介があったが、どうやらトキエアのサービスではなく、県内各社からの提供品なんだとか。もっと言えば中央の金の延べ棒型の飴は先に言及した新潟トヨタ自動車からの提供だそうで、ずいぶん力を入れて支援している。

トキエア103便の搭乗記念品

トキエア103便/ 飲み物とお菓子はスポンサーから提供

新潟空港には滑走路が2本あるが、今回は長い方のB滑走路から離陸。滑走路の方角は10/28だそうで、ほぼ東西方向といった感じ。滑走路端でしばらく待機しているなと思ったら、IBEXの飛行機が降りてきて、これをやり過ごした後に離陸。この日は視程が良く、朝日連峰とその後ろに控える山々が綺麗に見えている。

新潟空港 取付誘導路から空港北側

新潟空港/ IBEX機が降りてきた

離陸すると上昇しながら大きく右旋回。空港は阿賀野(あがの)川の河口付近に位置していて、目の前が日本海といったロケーションになっているというのがこの写真を見るとわかりやすい。前述した2本ある新潟空港の滑走路のうち河口に沿って敷設されているA滑走路は全長が1,300mほどしかないため、旅客機はほとんどが今回利用したB滑走路の離発着になっている。

TOK103便 新潟空港全景

新潟空港全景/ 滑走路末端付近で交差している

離陸早々日本海上に出て、機は北上を始める。新潟から札幌までというとそれほど遠い印象もなかったのだが、考えてみれば東京から300kmほどの位置なわけで、東京から大阪までの距離(280マイル)よりも3割以上長く、東京から青森、東京から岡山とほぼ等しい距離。

更にこの日は向かい風が強いという事情もあって飛行時間が通常よりも長いとアナウンスがあり、約1時間50分とのこと。東北から北海道に向かうくらいの所要時間の気分でいたから、案外所要時間が長いことにびっくりした。

実はこれにはATR機の足がそれほど早くないことも影響していて、新潟から札幌千歳までをDHC8-Q400で運航しているANAの場合は所要時間が1時間25分。所謂「ジェット機」を使用しているJALの場合は1時間10分なので、性能差が比較的大きく出ている。いくら丘珠空港が街に近くとも、所要時間に30分の差があるとその時間差で追いつかれてしまうような。

TOK103便 新潟県村上市付近

新潟県村上市付近/ 朝日連峰がくっきり見える

ジェット機と比べて巡航高度が低めのプロペラ機ということもあり、飛行中は適宜機窓のアナウンスが入る。この日は雲が多く全景は見えなかったが、これは山形県鶴岡市付近の月山。個人的には以前、「スイデンテラス」に宿泊した際に登った記憶がある。

(「スイデンテラス」についてはこちら)

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TOK103便 山形県鶴岡市付近(鳥海山)

山形県鶴岡市付近/ 鳥海山は雲に覆われている

しばらくうとうとしているうちに機は本州を離れて北海道に入っており、進行方向右手には白老(しらおい)町付近の倶多楽(くったら)湖が見えてきた。あまり綺麗に窪んでいるから、隕石でも落ちてきてクレーターになってしまったようにも思えるが、同湖は活火山の一部なんだとか。なお、外部からの水の流入、流出のない湖だそうで、水質は極めて良いのだそう。

TOK103便 北海道登別市付近

北海道白老町付近/ 形が特徴的な倶多楽湖

その後ほとんど間をおかずに見えてくるのは千歳市付近の支笏湖。こちらも噴火によってできたカルデラ湖。栄養に乏しいため透明度が高いという特徴があり、また湖の深部に温かい水が残存しているため凍りにくいのだそう。以前宿泊した「水の哥」はこの支笏湖の辺りにある。

(「水の哥」についてはこちら)

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TOK103便 北海道千歳市付近(支笏湖)

北海道千歳市付近/ 支笏湖は高い透明度で有名

丘珠空港の滑走路は14/32で南東/北西を向いているうち、この日は空港南側からの進入。進行方向右手の遠方には北海道日本ハムファイターズが2023年に開場した「エスコンフィールド北海道」の姿も見える。

(同球場についてはこちら)

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TOK103便 北海道北広島市付近(エスコンフィールド)

北広島市付近/ 2023年開業のエスコンフィールドが見える

徐々に高度が下がってきて、近くにモエレ沼公園の「モエレ山」が見えてくると間も無く着陸。滑走路が1,500mしかないから、FDAジェット機では着陸後比較的急ブレーキで減速するのだが、それよりいくらか速度の遅いプロペラ機はゆっくり減速。

(丘珠空港着のFDA機に搭乗した際の記録はこちら)

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TOK103便 北海道札幌市付近(モエレ沼公園)

丘珠空港付近/ モエレ沼公園が見えると間も無く着陸

同空港はプロペラ機中心の空港だが並行誘導路があり、これを走って駐機場へ到着。どうやらここでは地上支援をHACが請け負っているようで、JALのロゴのついた防寒具を着た職員さんが飛行機の周りに多数見られた。ややもすると続けて到着したHAC機よりも人数が多いように見えたが、これは就航から間もなく不慣れなのが原因なんだろうか。

ともあれ、向かい風の影響で定刻よりも10分ほど遅れたものの、無事丘珠空港に到着。同空港では1時間弱の待ち合わせで釧路へ向かうHAC便に乗り継ぐ。

ざっくりしたイメージとしては、始発便が欠航という特殊事情があったとはいえ、思いの外繁盛しているな、というのが実感。乗継ぎのために再度搭乗待合室に入ると、折り返し便に搭乗する乗客で溢れていたから、開業直後にいきなり閑古鳥、というような状況ではなさそうに見えた。値段は直前でもそれなりに安く、選択肢としては十分ありという感じ。

ただ、ジェット機の6割程度の速度しか出ないATR機の遅さは如何ともし難く、せっかく丘珠空港が街中に近くとも、そのメリットを帳消しにしてしまうほど所要時間が長い。それゆえ、空港に着いてからも含めたトータルの所要時間をいかに縮められるかというところがポイントかもしれない。

あとはサービス廻りがもう少し全体的にこなれて来る必要があるかもしれないが、これは就航間もないということもあると思われ、もう少し時間が経ってから再度見てみた方が正しい評価ができそう。まずは安定して毎日運航にできるようにすることが先決か。

というお話。

*1:その小ささから「ミニバス」やら「ベビーバス」と呼ばれているとか。

*2:前日の丘珠発便が欠航して現地に機材が残ってしまっていたから、初便を就航するとその飛行機は帰りが空荷になってしまうという問題はあったのだが。