便名 : JAL/JL2732
日付 : 2023/12/xx
機材 : ATR42-600(AT4/T41orT42)
区間 : 根室中標津(SHB)11:15→札幌丘珠(OKD)12:10
所要時間 : 00:55
区間マイル : 178
搭乗クラス : 普通席
運航 : NTH(北海道エアシステム)
2023年10月末から始まる冬ダイヤで新規開設されたJALの新路線、札幌丘珠-根室中標津線。さして中標津に用事はなかったが、せっかくの機会ということで乗ってみることに。運航するのはHACこと北海道エアシステム。「エアコミューター」でないだけでも既にややこしいが、正式な3レターは「NTH」なのだとか。
ともあれ、やって来たのが根室中標津空港。「根室」を名乗ってはいるが、同空港から根室市までは約80kmの距離があり、少し距離が離れている。「富士山」を冠している静岡空港は富士山まで100km以上離れていることを考えれば、80kmであれば許容範囲だろうか。ちなみに同空港の年間の旅客数は20万人弱で、この数字は近隣では釧路空港の約1/3、紋別空港の4倍程度。
以前はANAグループの札幌千歳行き、東京羽田行きしか就航しておらず、ANAのカウンターしかなかった同空港だが、小さいながらも空港中央にJALグループもカウンターが設置されていた。どうやら預け荷物の検査はANA側で実施するようで、JAL側には検査機器が設置されていない。
今回の新路線開設により、丘珠空港からの路線は8路線。HAC社長が「将来的には丘珠から道内どこでも行けるように」とコメントしていることや、将来北海道新幹線が札幌まで延伸すると丘珠-函館路線は減便することが予想される点を勘案すると、浮いた機材でオホーツク紋別や稚内など、今後は道内のJAL未就航空港への路線が増えていくことになるだろうか。
素人目には、紋別に関しては近隣に女満別空港があることもあって道内需要というよりも観光需要が旺盛な土地というように見え、ともすると丘珠2往復よりも千歳経由で全国各地へ向かえる便が1往復でもあった方が良さそうな気もする。
同空港からの道内路線はHACが丘珠まで最大1日2往復、ANAが新千歳まで1日3往復。道内完結の移動か、乗継目的かで使い分けるということになるだろうか。ただ、これまでANAグループしか就航していなかったこともあって、今のところは先行者利益でANAの方が優位なようにも見える。
1日数便程度の空港ということもあり、カウンター近くには電光掲示板の類は設置されていない。便数が今ほど多くなかった時代はこのような方法で掲示をしていたんだろうか。
2階に上がると保安検査場の前に設置されている電光掲示板には、他の空港とは異なり空席状況、区間マイル、所要時間が記載されているのが特徴。札幌千歳行きのANAは「空席少々」だが、今回搭乗する札幌丘珠行きの便は「空席」なので、それよりも空席が多い模様。
しばらくすると折り返し札幌千歳行きとなる飛行機が到着。よくみるとこの飛行機は「JAPAN AIR COMMUTER」のロゴが入ったJACの機材。JACのATR42機のうちJA01JC、JA03JC、JA04JCの3機は共通事業機になっていて、AMX(天草エアライン)やHACの機材が整備をしている間はJACの機材が各社の路線を飛んでいる。
それにしても、まだ雪は積もっていないとはいえ、いかにも南国といったハイビスカスのデザインを纏った飛行機が北海道を飛んでいるというのは何とも不思議な光景。
根室中標津空港は国内初の木造ターミナルビルで、搭乗待合室も木を多用した暖かな雰囲気。ちなみに搭乗待合室には売店などは全くないので、買い物があるなら保安検査場を通過する前にしておく必要がある。ただしお土産屋さんはそれほど品物は充実しておらず、レストランはANA便に合わせて営業しているのでこの便の出発時には開いていなかった。
(以前空港を訪れた際の記録がこちら)
ATR機の貨物室はコックピットと客室の間。後ろに載せてしまうと重心が後ろに寄りすぎてしまうせいだろうか。機体へ荷物を運ぶ車はANAのロゴが入っていて、JALの車は配備されていない模様。2024年4月以降は地上の一部作業にかかる資格を相互認証するような記事が出ていたから、今後はこのような光景が増えていくのかもしれない。
遠目から見ても貨物室がいっぱいになった辺りで搭乗開始。そういえば、JALグループの改札機は設置されておらず、簡易的な読み取り機に端末をかざして通過した。機体後方から乗降するATR機は搭乗橋がつかないから、改札口脇の階段を下りて飛行機内蔵の階段で搭乗。大規模な空港には搭乗用のスロープが用意されていることもあるが、この空港にそんなものはなかった。
以前搭乗した際には「JAL SKY NEXT」仕様の不織布枕カバーが掛けられていたが、JAL本体の便同様、現在は革製の枕カバーに交換されている。この枕カバー、やけに小さくて見た目にはちょっと不恰好なのも本体同様。頭が当たる部分はカバーされているんだと思うが。
JACの機体ではあるが、機内サービスはHAC仕様で機内誌もHACのものがセットされていた。両社の機材は座席数等は同じだが、JACの機材と異なり機内にストレッチャーを設置する設備は搭載していないなどの違いがあるらしい。
この日の乗客は20人弱。医療関係者は無料で搭乗できるような取組みもしているようだが、乗客が定着するまではもう少し時間がかかるかもしれない。
ターミナルから滑走路まで並行誘導路はなく、滑走路に出てしばらく走り、滑走路端で回頭して滑走路26から離陸。奥の方が気持ち上っているように見えるが、概ね平坦といった感じの滑走路。
離陸上昇中の進行方向左手には中標津の街が見えてくる。中標津町は東西約42km、南北約27kmと結構な大きさの自治体で、約22,000人が住んでいるのだそう。街には「東武」を名乗る商業施設があり、てっきり東武鉄道が展開している事業なのだとばかり思っていたが、改めて調べてみれば無関係だったらしい。
地上はあまり天候が優れずぱらぱら雨が降っているような状況だったこともあり、中標津の街を過ぎた辺りで雲の中に入り、その後雲の上に出た。北海道内の路線ではあるが東京-名古屋間よりも少し短いくらいの距離があり、ある程度は水平飛行の時間が続く。
丘珠空港への着陸は一旦空港東側を通過して石狩湾上に出て旋回し、北側から着陸するルート。12月ということもあり、街中に雪は見られないものの、郊外はちらほら雪が積もっている箇所も見受けられる。
札幌市内以外はそれほど背の高い建物も多くないことから、結構な距離が離れていても街がどこにあるかはかなりわかりやすい。ちなみに札幌市の人口は2023年1月時点で195万人だそうで、東京、横浜、大阪、名古屋に次いで全国5番目の規模。
石狩湾新港の上で旋回すると、最終の着陸体制。丘の上でも海岸ぎりぎりでもない場所に風力発電の風車があるのは少し珍しいような。
ともあれ、丘珠空港の滑走路14に着陸。同空港のターミナルは滑走路32端に隣接していて、滑走路を端まで走り切って駐機場に進んだ。なお、同空港は2030年までに滑走路を現在の1,500mから1,800mへ延伸する計画があるのだそう。これが実現すれば通年でジェット機が発着することができるようになるはず。ともすると、新千歳との棲み分けはどうなるんだろうか。
近頃はFDAが冬期間以外の時期でジェット機を就航しているが、元々プロペラ機のみの空港だったとあって、搭乗橋は設置されていない。今後滑走路が延伸してジェット機の運航が増えるようになれば、ターミナルにも手が加えられるかもしれない。
(FDAの丘珠空港路線についてはこちら)
北海道らしく、駐機場の歩道部分には熊の足跡を模した標識がペイントされている。
12時台の到着便は今回の中標津便のみで、13時台は本州からの2路線が到着する。到着便を案内する電光掲示板では便数の多い函館や釧路が目立たなくなる程度に、各地と丘珠を結ぶ路線が増えてきたのは単純に喜ばしい。
ターミナルを出ると目の前には地下鉄東豊線の栄町駅、札幌駅前まで行く空港連絡バスが停車中。この便は空港連絡バス仕様の4列シート車両が充当されていたが、便によっては長距離高速バス用の3列シート車両が入ることもあるのが面白いところ。
ちなみにターミナル前に駐車場があるが、それほど収容能力は高くない。それゆえ昼下がりにはほぼ満車の状態だった。なお、駐車場の一角にはカーシェア(タイムズ)があり、訪問日時点では2台が配備されていた。
この日は約5時間の待ち合わせで次の秋田空港行きに乗継ぐ予定。ターミナルで5時間というのも中々面白くないから、件のカーシェアを借りて少し街へ出かけることに。
飛行機を降りてからターミナルの地下深いところまで10分近く歩いて電車に乗り、そこから札幌駅まで約40分の新千歳空港よりも、飛行機を降りて到着出口目の前に停車しているバスに乗り、30分もあれば札幌駅まで行ける丘珠空港というのは割と便利。力尽きてしまう前に、早いところ乗客が定着してくれるといいのだが。
というお話。