日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【搭乗記】ANA/NH0316(富山/東京羽田)


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便名 : ANA/NH0316
日付 : 2024/03/xx
機材 : B737-800(738)
区間 : 富山(TOY)11:45→東京羽田(HND)12:50
所要時間 : 01:05
区間マイル : 176
搭乗クラス : プレミアムクラス(UG)
運航 : ANAウイングス

JR富山駅前のヒルトン系ホテル「ダブルツリーbyヒルトン富山」に宿泊し、翌日の昼の便で東京に戻る旅程。2024年現在の富山空港にはANAしか就航しておらず、久方ぶりにANAグループの便に搭乗する。

尤も、久しく乗っていないような気がしていたが、記録を遡ると12月に根室中標津空港を訪れた際に利用しているらしい。どうにも200マイルに満たない短距離路線で利用する機会が多いような気がする。ともあれ、とりあえず今回有償で1度乗っておけば、年内は全て特典航空券でも問題ないはず。

(前回の搭乗記録がこちら)

biketourist.hatenablog.com

富山空港は空港東側に立山連峰、南側に飛騨山脈と、各方向に山が迫っている、飛行機にはなかなか厳しそうな立地。地図で見ると山まで10kmほどはあるようだが、この日は晴れていたからだろうか、やけに近く見えていた。

富山空港の展望デッキ

富山空港/ 正面は越中八尾駅方面

そうこうしているうちに折り返し316便となる東京からの飛行機が到着。富山県と北海道は古くから結びつきが強いそうで、東京(羽田)行きの他に北海道(札幌千歳)行きの便が設定されているのが富山空港の特徴。

北陸新幹線の開業以来、東京便は徐々に便を減らしていることもあり、新幹線開業当時は路線維持のために富山県富山市の東京への出張には飛行機を利用するようにお達しが出ているというニュースが取り上げられていた。

富山空港の展望デッキ ANAのB737-800

富山空港/ 後ろを流れているのが神通川

また、こちらの空港は比較的大きな河川(神通川)の河川敷に開設されているのが特徴で、滑走路と駐機場は河川敷に、ターミナルは堤防外に設置されている。それゆえ搭乗橋は結構な長さで約90m。堤防を乗り越えて伸びているため、見るからに全長が長いことがわかる。

富山空港の展望デッキ 堤防越しの搭乗橋

富山空港/ 搭乗橋の長さは約90m

2024年現在の就航路線は東京(羽田)が3往復と札幌(千歳)が1往復。かつてはJAL(JTA)もごく短期間就航していたことがある*1が、ANA以外の会社へのサポートにあまり熱心ではない土地柄のようで、JALの経営不振による路線整理の一環で早々に撤退していった。

少し脇道に逸れてしまうと、そのような過去がある中で、JALの就航していない富山駅前に「JALシティ」が新規開業した背景には少し興味がある。現在は持株比率で約80%をホテルオークラが所有しているから、同社の意向が強いのかもしれないが。

(その「JALシティ」についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

富山空港 保安検査場前の電光掲示板

富山空港/ 便数はそれほど多くない

そんなコテコテのANAグループのみ発着する空港ゆえ、保安検査場前には旧塗装のB767と思しきモデルプレーンがディスプレイされている。現在では「ANA」の文字とともに「Inspiration of JAPAN」のロゴが入っている部分は、かつて「全日空」の文字が入っていた。

この「全日空」は中国語で「終日空席だらけ」という意味になるようで縁起が悪く、現在の「ANA」に置き換わったものの、今度は今度でこれではどこの国の航空会社かわからないということで、現在の形に落ち着いているとか、いないとか。

富山空港 保安検査場前のモデルプレーン

富山空港/ 1989年以降は現行の塗り分け

ともあれ保安検査を通過して搭乗待合室に。地方空港でも順次設備の更新は進んでいるようで、JALANAで共通化された白い読取端末が設置されていた。

同時に複数の便が発着するようなことは殆どないこともあって、比較的大きな機材が使用されて席が埋まると溢れてしまいそうなサイズ。案内表示は今では懐かしい反転フラップ式(所謂「パタパタ」と呼ばれる方式)。航空会社の表示がないのが珍しい。

富山空港 改札口前の案内板

富山空港/ 航空会社の記載がない

ちなみに搭乗待合室の一角には事由に利用できるテレワークブースが設置されている。この手の設備は有料であることが多いが、同空港は特に追加の手続なく無料で利用することができるのが嬉しい。

巷にも同様の設備が増えてきたことは喜ばしいが、何かと利用するための事前手続が多くて辟易してしまう。ある程度簡単に利用できるようでないと、面倒臭さが優って結局利用しないで済む方法を模索する方に逃げてしまう。

富山空港 制限区域内の会議ブース

富山空港/ 会議ブースが1部屋設置されている

しばらくして搭乗開始。今回はアップグレードポイントを利用してプレミアムクラスなので、GROUP2での搭乗。4ptくらいであれば失効させてもさほど痛手でもなかったが、搭乗する機会ができたのであれば使ってしまおう、という感じ。

改札口から飛行機までは堤防を横断する関係で結構な距離がある。河川敷という立地の特殊性だろうか、おそらく集中豪雨なんかが起きれば河川敷は水没すると思われ、他空港と比較すると駐機場に出ている機材が少ないような気がする。また、堤防をぶった切ってしまうとその部分から水が逃げてしまうから、駐機場とターミナルを結ぶ道路も工夫が施されているのも特徴的。

 

富山空港 搭乗橋から駐機場方向

富山空港/ 駐機場とターミナルは土手に遮られている

この日の機材は旧タイプの座席を搭載したB737-800で、進行方向左手側の座席。先ほど訪れた展望デッキは多くの来場者で埋め尽くされているのが見える。フォントのせいか、「TOYAMA」の文字がどこぞの自動車会社のロゴのようにも見える。

(プレミアムクラスの座席についてはこちら)

www.ana.co.jp

 

ANA316便 富山空港のターミナルと堤防

富山空港(11:46)/ ほぼ定刻通りに出発

富山空港には並行誘導路が設置されておらず、滑走路端で転回して離着陸する運用。ある程度は積雪の予想される地域ということもあり、滑走路上の標識類は白色ではなく積雪地仕様のオレンジ色に塗られている。これは近いところでは石川県の小松空港、他にも北海道や東北などの空港と同様。

ANA316便 富山空港の滑走路

富山空港(11:53)/ 滑走路北側まで走り、Uターンして離陸

滑走路の全長は2,000mで、羽田空港の多くの滑走路と比べて500mほど短い。背後に山が控えていることも影響しているかもしれないが、転回時に客席から見ているだけでも滑走路が短いのが判る。

ちなみに2,000mでも天候がよければB777型機クラスでも離着陸が可能なようで、冬季以外の期間には同機材の発着実績もあるとか。B777型機よりも一回り小さいB787型機は今でも定期的に就航している。

ANA316便 富山空港の滑走路

富山空港(11:56)/ 国内では短めの2,000m滑走路

離陸すると飛騨山脈を見ながら上昇した後は旋回して東に向かい、栃木県の宇都宮あたりで東北•北海道方面からの便の進入経路と合流する、言わば北陸新幹線のようなルート。

一方、それほど距離の離れていない小松空港は離陸すると南下して名古屋に向かい、西からの便と合流して羽田に向かう、東海道新幹線ルートを取るというように、若干の距離の違いで東京に至るまでのルートが全く異なっているのが面白い。

ANA316便 富山空港からの離陸上昇中

富山空港付近(11:58)/ 奥が猪谷、高山方面

旋回の途中では富山市の西側、日本海に面している射水(いみず)市の新湊(しんみなと)大橋や、2024年元旦の震災により被害を受けた能登半島の姿が確認できる。個人的には数年前に宿泊した「加賀屋」や、併せて訪れた「のとじま水族館」も大きな被害を受けたと聞き、その状況が気になっている。

ANA316便 新湊市と能登半島

新湊市付近(12:00)/ 奥は能登半島方面

この日は、というより春先は気流の悪い日が多く、この日も殆どシートベルトサインは消灯しない旨が事前にアナウンスされていた。そんな状況ではあるが、この便は昼食提供便ということもあってシートベルトサインが消灯するとともに食事が配膳された。

ANA316便 プレミアムクラスの昼食

昼食/ 食事時間は10分に満たない

メニューはちらし寿司以下全体的に和食のメニュー。シートベルトサインの消灯時間は7分程度しかなかったので、ゆっくり食事をする時間なんか取りようもなく、ともすると味もよくわからない。ともあれ、シートベルトサインが再点灯してしばらくするとお盆と空き容器の回収が始まり、そこそこ揺れ始めたところでテーブルを収納。

ANA316便 プレミアムクラスの昼食

昼食/ 比較的酢の効いた食べ物が多い

この日は北風運用で、宇都宮から房総半島を縦断してC滑走路(34R)へ着陸するルート。千葉県の房総半島中部あたりは上空から見るとえらい数のゴルフ場が開設されているのが見える。これは京阪神から車で少し走った兵庫県の郊外なんかと似ているところがある。

(同様の風景の広がる兵庫県がこちら)

biketourist.hatenablog.com

 

ANA316便 千葉県房総半島上空

房総半島上空(12:38)/ この辺りはゴルフ場が多い

徐々に高度が下がってくると、所々地肌が露出している山が見えてくる。どうやらこれは山砂採取場、もしくは砂利採取場のようで、土地の造成やコンクリートの原料として利用されるのだとか。普段は東京に戻ってくるのが夜間だったからあまり気づかなかったが、思いの外房総半島にはこんな施設が多い。

ANA316便 千葉県房総半島上空

房総半島上空(12:41)/ 埋立やコンクリートの原料に使われるとか

国道16号線沿いに広がる工業地帯を飛び越えると東京湾に出て、5分としないうちに羽田空港に着陸する。地図に照らしてみるとここはちょうど君津市のあたりで、製鉄業の工場が広がっているエリア。

ANA316便 千葉県市原市付近の京葉工業地帯

君津市付近(12:43)/ 化学プラントや製鉄所が多いエリア

普段D滑走路から遠目に見ていた東京湾アクアラインの換気塔を飛び越すと間も無く着陸。遠くから見ているそれと、間近に見たそれとではだいぶ見え方が違っているように思える。

(D滑走路からの見え方はこちら)

biketourist.hatenablog.com

ANA316便 アクアラインの換気塔

羽田空港付近(12:46)/ 遠くから見るのと違って見える

この頃、進行方向左手にはA滑走路(34L)に着陸するスカイマークB737型機が並行進入していた。羽田空港は「オープンパラレル」という運用形態で、滑走路中心線の間隔が1,310m以上離れていれば、各滑走路では離着陸を航路が交差しない他の滑走路*2に影響されずに行うことができるようになっている。

ANA316便 並行進入中のスカイマークB737型機

羽田空港付近(12:46)/ 対岸あたりからずっと並んで降下

会社の違いはあれど機材が一緒ということで、速度もほぼ一緒。A滑走路とC滑走路の間にある格納庫の陰に隠れて見えなくなるまでほぼ真横を飛び続けていた。

ANA316便 並行進入中のスカイマークB737型機

羽田空港付近(12:47)/ 格納庫の陰に隠れて見えなくなった

気流が悪かったせいだろうか、滑走路に着陸した時点でほぼ定刻を迎えていた。C滑走路から第2ターミナルは近いとはいえ、そこからターミナルまでの移動は数分を要する。

ちなみに第2ターミナル側では本館とサテライト棟の接続工事を実施中で、工事用のクレーンが存在感を示している。今のところ本館からは連絡バスで向かう運用になっているが、骨格となるであろう鉄骨がすでにいくらか出来上がっているから、じきに横に伸びていくはず。

なお、これまではサテライト棟から出発する便に搭乗するステイタス会員に対し飲食サービス名目で1,000円の金券が配布されていたが、2024年3月末をもって終了した模様。

(羽田空港第2ターミナルのサテライト棟についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

ANA316便 建設中の羽田空港第2ターミナル

羽田空港(12:48)/ サテライト棟と本館は接続工事中

ANAシングルトラックの地方路線ということもあり、沖留めやボーディングステーションの可能性も考えられたが、飛行機は第2ターミナル南側の67番駐機場に到着。全体的に第2ターミナルは飛行機の間隔が近く、密集しているような印象がある。

(「ボーディングステーション」についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

67番搭乗口を含む南ピアから到着出口までは結構な距離があり、徒歩で約10分ほどを要する。前述のサテライトまで徒歩移動となると15分以上掛かってしまいそうだが、保安検査の締切は20分前で据え置くんだろうか。

ANA316便 羽田空港第2ターミナルとB767型機

羽田空港T2(12:52)/ 到着出口を出たのは13:05頃だった

この日は晩に空港近くで予定があったから、ターミナル内のコインロッカーに荷物を預け、空港連絡バスに乗って次の目的地へ移動した。新幹線が開業したとはいえ、東京の西側へ移動する際にはまだ飛行機にもいくらか優位性は残っているかもしれない。

というお話。

*1:そんなに昔の話でもなく、2002年度から2005年度の4年間。

*2:例えばC滑走路とD滑走路は着陸機と離陸機が交差するので、飛行機が交差しないタイミングを図って管制指示が出されている。