日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗車記】ライトライン•105列車(宇都宮駅東口/芳賀•高根沢工業団地)


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便名 : ライトライン•105列車(普通列車)
日付 : 2024/03/xx
区間 : 宇都宮駅東口(16:24)→芳賀•高根沢工業団地(17:12)
所要時間 : 00:48
乗車クラス : 普通車自由席
運賃 : 400円(交通系ICカード決済)
運行 : 宇都宮ライトレール

栃木県内の用事が早めに終わり、少しだけ時間があったので、以前から気になっていた「ライトライン」に乗車してみることに。

(事業者公式サイトはこちら)

www.miyarail.co.jp

同社は宇都宮市筆頭株主第3セクターで、日本国内としては75年ぶりの路面電車路線なんだとか。それゆえ注目度はかなり高く、JRの駅構内にも開業を記念した展示がされていた。

JR宇都宮駅 新幹線改札口内のモックアップ

JR宇都宮駅/ 日本国内の自治体が注目している取組み

2024年現在は宇都宮駅東口(海側)から、目の前に本田技研工業の施設のある終点の芳賀•高根沢工業団地までの約14.6kmが開業済。将来的には宇都宮駅東口からJRを跨いで東武宇都宮駅前を通り、桜通り十文字交差点まで延伸する計画があるとか。

JR宇都宮駅東口 ライトライン乗り場

JR宇都宮駅東口/ 駅直結のデッキからホームに連絡している

実際、駅前は延伸を見据えた構造になっていて、建物前の妙に広い歩道の部分と、その正面に接続している道路あたりに線路が敷設されることになるはず。ここで高度を稼ぎ、在来線と新幹線の間くらいを通過することになると思われる。

JR宇都宮駅東口 ライトライン延伸予定地

JR宇都宮駅東口/ 駐輪場前の空き地に線路が敷設されるはず

列車は3両編成で、ボックスシート主体の座席配置。比較的乗車時間が長いからだろうか、巷の路面電車よりはクッション性の高い、割に快適な座席が設置されている。ちなみに車体は所謂「街の路面電車」と比べると若干大柄で、15cmから20cmほどの差でしかないが随分ずんぐりむっくりして見える。

宇都宮ライトライン 座席

宇都宮ライトライン/ この手の車両にしては座り心地が良好

乗車した2024年3月当時は全列車が普通列車だったが、その後4月からは平日の早朝に2本だけ快速列車が運行されているのがこの路線の特徴。路面電車で通過停留所があるというのはなかなか面白い。

宇都宮ライトライン 運転席付近

宇都宮ライトライン/ 現金降車の場合は運転士直後のみ

この路線は「信用乗車方式」で、交通系ICカードを利用する場合にはドア横のICカード端末にタッチすればどこの扉からでも乗降できる仕組み。

現金の場合には各停留所に設置されている整理券発行機で整理券を取得し、降車時は運転席直後の料金箱に整理券と運賃を投入して降車する。路線バスなんかでは車両側に整理券発行機を設置しているケースが多いが、駅に発行機を設置するのはローカル線で時々見られる方法。以前乗車したJR久留里線上総亀山駅がそうだった。

(JR久留里線についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

宇都宮ライトライン 整理券発行機

宇都宮ライトライン/ 現金の場合は乗車前に整理券を発行する

同路線には途中「平石」と「グリーンスタジアム前」の2つの停留所に待避線が設置されている。乗車当時はまだ全列車が各駅停車で、所要時間も48分を要していたが、将来的にはこの設備を活用し、快速は38分、普通列車は44分での運行を想定しているとか。途中停留所で乗換える場合、運賃の支払いはどうなるんだろうか。

宇都宮ライトライン 車両基地と車両

平石停留所/ 停留所の一角に車両基地がある

開業から間もない2024年3月の時点では最高速度は40km/hに抑えられていたが、将来的には特認を得ることで高架専用区間では70km/h走行を目指しているのだそう。道中のアップダウンは異様に激しいが、確かにそれくらいの速度で走れそうな区間も見られた。

宇都宮ライトライン 出入口付近

宇都宮ライトライン/ 勾配は激しいが、線路は直線

この日は午前中に比較的強い雨が降っていたこともあり、軌道敷内はところどころ水が溜まっていて、場所によっては完全に池のようになっているところも。それほど床の高くないLRT車両だが、この程度水に浸かっても機器類に問題はないのだろうか。

宇都宮ライトライン 水没した線路

宇都宮ライトライン/ 所により線路は完全に水没

芳賀町工業団地管理センター前停留所を出て交差点を左折すると、大きなアップダウンを経て終点の芳賀•高根沢工業団地へ向かう。見るからに急勾配といった感じだが、これでも碓氷峠の66.7 ‰(パーミル)*1よりは緩いそうで、碓氷峠がどれだけ急だったかが分かる。それにしてもこの路線、鉄道空白地帯に開通したにしてはえらく長い停留所名が多いような。

宇都宮ライトライン アップダウンの激しい線路

宇都宮ライトライン/ 最も急な箇所では60‰を超えるとか

そんなこんなで列車は宇都宮駅東口から約50分で終点の芳賀•高根沢工業団地停留所に到着。ここは本田技研工業の北門があるのみで、ぱっと見た限りでは周囲にコンビニエンスストアの1軒もなさそう。工業団地というよりは会社前だが、第3セクターの鉄道で特定の会社名を使用にするわけにもならず、こんな停留所名になっているとか。

この路線で使用される車両はHU300形で、「芳賀」と「宇都宮」の頭文字でHU、となっている。ちなみに「ライトライン」の「ライト」が宇都宮の別称「雷都」からきているそう。あまり感覚と合致しないが、宇都宮は日本全国でも特に雷の多い土地らしい。

宇都宮ライトライン 車両外観

芳賀•高根沢工業団地/ 雷をモチーフにしたカラー

ちょうど到着した17時頃は工場の退勤時間のようで、工場には送迎のバスがひっきりなしに出入りし、またこの停留所にも続々と乗客が現れた。始発停留所の時点であっという間に座席は満席になり、列車は宇都宮駅東口に向けて出発していった。今までは路線バスがこの需要に対応していたということだろうか。

宇都宮ライトライン 終着駅

芳賀•高根沢工業団地/ 本田技研工業の専用駅といった感じ

10分ほど待つと次の列車が到着。到着して一旦全てのドアが閉まり、運転士さんが進行方向側の運転席についてしばらく経つと扉が開くのだが、先ほどの列車よりも今回の列車の方が早く満席になり、出発時刻を迎える頃には結構な数の立ち客がいるくらいの混雑に。

宇都宮ライトライン 終着駅

芳賀•高根沢工業団地/ 計画から開業までは約30年かかったとか

流石に3月では18時を迎える頃には外はだいぶ暗くなり、席に着いてぼーっとしているうちに寝てしまったのだが、宇都宮駅東口に到着する頃には首都圏の通勤電車顔負けの混雑になっていた。

聞くところによると4月20日には計画よりも2ヶ月ほど早く利用者が300万人に達したそうで、こうした公共交通機関の中ではかなり順調に事業が進んでいる様子。この宇都宮の成功を受けて他都市にも同様の計画が持ち上がるのか、今後の展開が気になるところ。個人的には一度快速列車に乗ってみたいが、なかなか平日早朝のみとなると難易度が高いのが悩ましい。

というお話。

*1:千分率。1,000m進む間にどれだけ上下するかを示す。