日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗車記】桜島号54107便(鹿児島本港(高速船ターミナル)/博多バスターミナル)


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便名 : 桜島号54107便
日付 : 2023/07/xx
区間 : 鹿児島本港(高速船)(08:25)→博多バスターミナル(13:12)
所要時間 : 04:47
乗車クラス : 普通席(座席指定制)
運賃 : 5,250円(事前クレジット決済)
運行 : JR九州バス

鹿児島から中国地方への移動日程。両地域間は程よく遠いにも関わらず、広島西飛行場の休止や九州新幹線の関西直通などに伴って航空路線の休止が相次ぎ、今では陸路でしか移動できなくなってしまった。

そんな同区間の移動は急ぐ旅であれば全区間新幹線で移動すればよいのだが、今回はそれほど急ぐでもなく、鹿児島から福岡までの区間は高速バス「桜島号」で移動することに。COVID-19前は日に20往復程度が運行されていたが、2023年6月時点では日に13往復程度の運行。現在は福岡側で西鉄、鹿児島側で鹿児島交通鹿児島交通観光・南国交通・JR九州バスが運行しているうち、JR九州バスの運行便。

(路線公式サイトはこちら)

www.nishitetsu.jp

鹿児島側の起点は繁華街の天文館(てんもんかん)から徒歩で15分程度のところにある「高速船ターミナル」。種子島屋久島方面に向かう高速船「トッピー」「ロケット」が発着しているところ。

(「いづろ通」電停からターミナルまでの経路はこちら)

biketourist.hatenablog.com

鹿児島本港(高速船ターミナル) 建物外観

鹿児島本港(高速船T)/ いづろ通から徒歩15分ほど

建物前はバス停が3つあり、1番乗り場が今回乗車する「桜島号」、2番乗り場が市街地向けの路線バス、3番乗り場から志布志港を発着する「さんふらわあ」連絡シャトルバス「さんふらわあライナー」が出発する。それにしても、高速船でここまで来て、更に志布志から大阪まで船となるとかなりの長旅。

鹿児島本港(高速船ターミナル) 1番乗り場 桜島号

鹿児島本港(高速船T)/ 桜島号は「1のりば」から出発

出発10分ほど前にバスが回送されてきた。やってきたのは現行型より1つ古いタイプの三菱ふそうエアロエース。真っ赤な車体には「かすたどん」や「軽羮(かるかん)」を販売する「薩摩蒸気屋」の大きなロゴが掲げられている。

鹿児島本港(高速船ターミナル) 桜島号 JR九州バス エアロエース

鹿児島本港(高速船T)/ 「薩摩蒸気屋」ラッピングの真っ赤なJR九州バス

車内は1列+2列の横3列配置で、夜行高速バスのように各列が独立した配置(=3列独立シート)になっていないから各座席の横幅はかなり大きめに取られている。

ちなみに「桜島号」では横4列化の流れが進んでいて、今では鹿児島交通鹿児島交通観光、JR九州バスの運行する日に4往復程度のみ3列シートで、残りが4列シート。個人的には4列シートならいくらか追加してでも新幹線でいいや、という気持ちになってしまう。

ちなみに4列シート便には「プラス1シート」という、2列席を追加料金1,000円(税込・2023年6月時点)を支払うことで1名で使用できるサービスが提供されているが、あくまで座席は横4列仕様なので、快適性としては今一つ。尤も、現在はまだ満席運行とまでいっていない様子で、追加料金を支払わなくとも実質的に独占できることが多いかもしれない。

桜島号 JR九州バス 車内設備

JR九州バス桜島号」車内

このJR九州バスの車両、少し変わっているのが座席配列で、一般的な配置と逆に運転士側がA席、出入口側にB、C席が配置されている。また、どうやら席番は切り替えられるようで、昼行便は運転席側がA席、(現在存在しないが)夜行便は出入口側がA席という運用になっている模様。

桜島号 JR九州バス 車内設備

JR九州バス桜島号」車内/ 昼行は運転席側がA列

さて、バスは08:25に鹿児島本港(高速船ターミナル)を出発すると、いづろ通の交差点を経て「センテラス天文館」前の高速バス乗り場に停車。この日は乗車なく、そのまま電車通りを走り鹿児島中央駅前にある「鹿児島中央ターミナルビル」内のバスターミナルに到着した。

(鹿児島中央駅からバス停へのアクセスはこちら)

biketourist.hatenablog.com

余談だが、JR九州バスはポップ体を利用しがち。あまり公式の文書にこの書体を使っている会社は見たことがないのだが、どういう好みなんだろうか。

桜島号 JR九州バス 車内設備

鹿児島中央駅前/ 「鹿児島中央ターミナルビル」内に乗り場がある 

08:40に鹿児島中央駅前を出発し、眼前に「アミュプラザ鹿児島」の観覧車を見ながら左折すると、武岡トンネルを経由して鹿児島インターチェンジへ向かう。

この桜島号、種別としては「各停」「ノンストップ」に大別され、更に「各停」の中には「鹿児島空港経由」と「非経由」の2種類が設定されているので、合計3系統がある。ただ、福岡と長崎を結ぶ「九州号」のような所要時間の差*1はなく、最速便と全停車便の差は20分程度しかない。

桜島号 路線図

鹿児島中央駅前/ この便は3つあるうちの真ん中のパターンで運行

鹿児島中央駅から市電通りを1kmほど走り、都通電停の辺りで右折する。この交差点で左を見ると大規模な構造物のある建設現場があるが、これは2030年頃の開通が予定されている鹿児島東西道路。鹿児島インターチェンジと同地点を地下道路で結ぶ予定になっている。

鹿児島県鹿児島市 鹿児島東西道路 工事現場

市電都通電停付近/ 「東西道路」開通まではもう少し時間がかかりそう

鹿児島インターチェンジから九州道に入り、高速伊敷(いしき)、高速帖佐(ちょうさ)と停車し、鹿児島空港南が鹿児島側最後の停留所。ここから八代インターチェンジまでは制限速度80km/hが連続する区間

バス停停車直前には「西郷公園」に建つ西郷隆盛像がちらっと見える。今や空港ターミナル前に直接乗り入れる便があるので歩いてここまで来るメリットも今一つだが、徒歩10分程度でアクセスすることができる。

(鹿児島空港から鹿児島空港南停留所までの徒歩ルートはこちら)

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桜島号 鹿児島空港南バス停から鹿児島空港方向

鹿児島空港南バス停/ 空港ターミナルまでは徒歩10分程度

鹿児島空港南を出発して30分ほどで最初の休憩地点、えびのパーキングエリアに到着。大規模な店舗はないが、施設脇の展望スペースからはえびのの町並みが一望できる。あいにくこの日は天候が今一つで、空は厚い雲に覆われていた。

九州道 えびのサービスエリア

えびのPA/ 高速道路は一段高いところを走っている

バスの後ろには本線車道があり、背後の山には熊本県人吉市と宮崎県都城市を結ぶ国道221号線の「えびのループ橋」が架かっている。

九州道 えびのサービスエリア 桜島号

えびのPA/ 上を走るのは国道221号線のえびのループ橋

えびのを出発するとバスは徐々に山間部に入り、比較的カーブが続き、トンネルの連続する区間に突入。肥薩線沿いの球磨川上空を突っ切る約30弱のトンネルの狭間では、かなり山深い様子が見てとれる。

九州道 人吉から八代付近

人吉から八代付近までは肥薩線(休止中)沿いを走行

八丁山トンネルを抜けると突如として八代平野に入り、ここから福岡都市高速に乗継ぐ太宰府インターチェンジまでは最高速度100km/hの区間八代インターチェンジを通過する頃に左を向くと新八代駅が見えてくる。このインターチェンジから駅までの距離の近さを活かしたのが「B&Sみやざき」号。新幹線とバスの組み合わせで博多と宮崎を約3時間30分で結んでいる。

九州道 新八代駅・八代インターチェンジ付近

八代インターチェンジ付近/ 「B&Sみやざき」の発着する新八代駅が見える

熊本平野に入ると少し青空が見えてきた。関東地方では稲の背丈もずいぶん伸びてきた頃合いだが、九州では7月に入ってからようやく田植えが始まるところもある模様。

九州道 八代から熊本付近

八代から熊本付近/ この辺りは7月上旬に田植えをしていた

えびの出発から約90分ほどで北熊本サービスエリアに到着。同サービスエリアは現在建替工事の最中のようで、全体的に仮設の設備が多数配置されている状況だった。

九州道 北熊本サービスエリア 仮設建物

北熊本SA/ 建替中で仮設建物での営業中

同サービスエリアの名物は空港レストランやロイヤルホストなどを運営する「ロイヤル」のカレーパン。なぜ熊本で佐賀牛なのかは明らかでないが、レジ前に多数ポップが掲示されており、また商品が陳列されていた。佐賀牛はよく煮込まれていて、塊感がないのが個人的には少し残念ポイント。

九州道 北熊本サービスエリア 佐賀牛カレーパン

北熊本SA/ 佐賀牛カレーパンがおすすめされていた

仮施設であるがゆえの一番の特徴が駐車場。通常サービスエリアの駐車場は逆走防止で進行方向に角度をつけて駐車場が設置されているそうだが、スペースが限定されるからだろうか、通常の商業施設の駐車場と同様な配置になっている。

九州道 北熊本サービスエリア 駐車場

北熊本SA/ 仮駐車場は収容力重視

15分弱の休憩を経て出発し、みやま柳川インターチェンジを過ぎた辺りの左手遠方に福岡ソフトバンクホークスの2軍本拠地のある筑後船小屋駅付近が見えてくる。同インターチェンジの次が鹿児島側から来た場合の最初の降車停留所となる八女インターチェンジ

高速バスは路線によっては降車の有無を確認しつつ本線上を通過することがあるが、この便では降車の意思は確認したものの一旦本線は離脱し、バス停に入って停車せずに通過した。

八女インターチェンジからそれほど間が空かずに次の停留所、久留米インターチェンジに接近。ここでも降車はなかったが、この停留所では料金所外にバス停があり、一旦料金所を抜けてバス停前を通過、再び本線に復帰。

本線に戻って1kmちょっと走ると筑後川を横断する。筑後川に架かっている橋は片側3車線が2セット設置されていることもあり、上空から見てもかなりの存在感。

九州道 久留米付近 筑後川

久留米付近/ 大がかりな橋で筑後川を渡る

当時筑後川を横断する前後では、この辺りは当時片側3車線のうち中央1車線を潰して工事の真っ最中。それほど道幅があるでもなく、両脇をコンクリートブロックで囲われた中を走るのは中々ストレスがかかりそう。

九州道 久留米付近 工事区間

久留米付近/ 1車線が潰されて2車線になっていた

間もなくすると鳥栖ジャンクションを通過し、長崎、大分方面行きバスへの乗換えが可能な高速基山バス停で停車すると数名が下車。筑紫野は本線上を通過し、太宰府インターチェンジ九州道を離れて福岡都市高速環状線へ乗継ぎ。太宰府から10分もしないうち、進行方向右側に福岡空港の滑走路と国内線ターミナルが見えてくる。

福岡空港では将来的に国内線側にも高速バスターミナルを置くような計画があったと思うが、そうなるとこの桜島号も立ち寄るようになるだろうか。

桜島号 都市高速 福岡空港

福岡空港/ 滑走路増設工事が進行中

都市高速をしばらく走り、天神北ランプから一般道。この辺りは路線バスタイプの車両が多数走っているのが他の地域から来ると新鮮に映る。

どちらかというと自家用車よりもバスで渋滞している天神の大通りをしばらく走り、定刻よりも約10分ほど早い12:50頃西鉄天神バスセンターに到着。便数の割にそれほど広くないバスターミナルの一角には、出発を待つ車両が隙間なく待機していて、これはこれで中々壮観。

桜島号 西鉄天神バスセンター

西鉄天神バスセンター/ 隙間なく待機のバスが並んでいる

5分弱停車して再び出発すると、次の停留所は終着の博多バスターミナル。天神バスセンターの出口はバスが一斉に出発するような信号の作りになっていて、信号待ちをするのは前後左右バスだけという異様な、しかしこの辺りでは日常的な光景。

桜島号 西鉄天神バスセンター

天神付近/ 左後方にもバスが2台ほど並んでいる

そういえば当時は「山笠」の直前の時期で、街中、交差点の角にはビル3階ほどの高さのある山車が展示されていた。福岡にはしばしば訪れている割に、こうした祭事は未だ見たことがない。一度くらい見てみたいものだが。

先行する熊本行きの「ひのくに」号に続いて博多駅前を通過し、ビルの周囲を反時計回りに一周、そのまま左折し、運転士の技量が試される極めて狭い入口からビル内に入る。それにしても、敷地いっぱいに建物を建てているとはいえ、走路にはもう少し余裕を持たせられなかったんだろうか。ちなみに入口すぐの側壁には過去の苦闘の跡がいくつか残っているのが見える。

博多バスターミナル バス入口

(別日撮影)博多バスターミナル/ かなり狭い入口から入っていく

ともあれ、はまると長い天神から博多駅までも渋滞はなく、2階の降車場には引き続き定刻よりも10分ほど早い13:00頃の到着。道中で13:30前の新幹線を予約していたから、変更なく間に合いそうでとりあえずひと安心。

博多バスターミナル 建物外観

(別日撮影)博多バスターミナル/ 博多駅隣接の好立地

4列シート勢力が拡大し、また価格も新幹線に近づいてきたことでその優位性が徐々に小さくなりつつある桜島号だが、幸いにして未だ日に何本かは乗り得な便が残っているから、せめてこれをうまく活用して移動したいところ。

というお話。

*1:「スーパーノンストップ」と「各停便」には約1時間20分の差がある。