日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗車記】かもめ25号(肥前山口/長崎)


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便名 : かもめ25号
日付 : 2022/09/xx
区間 : 肥前山口(15:45)→長崎(16:55)
所要時間 : 01:10
乗車クラス : グリーン車指定席(DXグリーン)
運行 : JR九州

佐世保から佐世保線の特急「みどり」号で肥前山口駅までやって来て、ここからは長崎本線に乗換えて長崎を目指す。

(ここまでの移動はこちら)

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それほど需要があるルートとも思えず、佐世保線から長崎本線への乗換えが考慮されているのかは分からないが、双方ともに本数は多いこともあって5分ほどの待ち合わせで、かつ向かいのホームで乗換えができる。

ちなみに同駅のホーム上には近隣の自動車学校が広告を掲出しているが、ここには昭和レトロなアニメを模したキャラクターが描かれている。南海電鉄の「ラピートルジャー」のような扱いになっていなければ良いのだが。

(南海電鉄の「それ」は以下参照)

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JR肥前山口駅 自動車学校

(@JR肥前山口駅)自動車学校独自のキャラクターがいるらしい

このとき隣のホームには普通列車が停車中。訪問当時(2022年9月上旬)はここから少し西に進んだところにある肥前浜から長崎までの間もまだ電車が行き交っていたが、同月下旬の西九州新幹線の開業の後、電化設備が撤去されてしまっている。

この区間は特急列車がなくなってしまった訳で、在来線沿線住民からすれば新幹線開業の恩恵はどれほどあったか気になるところ。車社会ゆえ、在来線であろうと新幹線であろうと乗らない、というのが答えかもしれないが…。

JR肥前山口駅 長崎本線 普通列車

(@JR肥前山口駅)同駅以西は気動車列車が増えた

程なくして博多からの特急「かもめ25号」が到着。この便は「黒いかもめ」の787系車両による運行。ここ肥前山口から長崎までは1時間ほどの所要時間だが、これまで同列車に用意されている「DXグリーン車」の設備を利用したことがなかったから、今回はこれを利用してみることに。

(以前乗車したグリーン個室については以下参照)

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(コンパートメントについては以下を参照のこと)

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かもめ号は列車の長崎方先頭車両がグリーン車になっているが、この車両の前方区画がDXグリーン車で、2列+1列の計3席が設置されている*1。DXグリーン車の登場は2005年だそうで、JR東日本の新幹線に設定されている「グランクラス」の先輩格といった存在。

これはあくまで私見だが、JRはどうにもこの手の上級クラスの運用に苦戦していて、先駆者のJR九州、後発のJR東日本のどちらも上手くいっていないように見える。つい先頃、JR東海も同様の設備を計画しているニュースがあったが、東海道新幹線ほどの需要があれば上手くいくだろうか。

JR九州 かもめ25号 DXグリーン車

運転席直後に1列+2列の横3列配置

座席はちょっとレトロな市松模様。かつて東海道本線を走っていた「つばめ」の座席も似たような模様だったというから、これを参考にしてという感じだろうか。座席は電動のリクライニングで、夜行高速バスと同程度くらいの倒れ具合。

JR九州 かもめ25号 DXグリーン車

リクライニングは電動式

列車は肥前山口駅を出発して10分も走らないうちに諫早湾の海沿いに辿り着くのだが、この時進行方向左側遠方にはずいぶん高く煙が上がっていて、野焼きでもしているのかと思えば火災が起きていた。後になって調べると2時間もしないうちに鎮火したようだが、せめて怪我人がなかったことを願うばかり。

かもめ25号 長崎本線 車窓

煙は大分遠くからも確認できた

乗車したのが9月の上旬から中旬くらいの時期だったから、沿線は徐々に稲が黄色に色づき始めるくらいの頃合い。それがあっという間に冬になり、恐らくこの記事を投稿する頃には2023年になっているだろうから、月日はとんでもない早さで移ろっている。

かもめ25号 長崎本線 車窓

収穫まではもう少し時間がかかりそう

列車は海沿いに差し掛かるとスピードを落として右へ左へカーブしながら進む。博多から離れるほど揺れが大きくなるJR九州ゆえ、この辺りでは上下左右に結構な揺れで、鹿児島近辺ほどではないが*2結構な乗り心地の悪さ。特急利用者にしてみればこの点は新幹線に移行することによって改善されるメリットと言えるかもしれない。そういえば、客室の静粛性が高いがゆえ、ちらほら運転席の警告音が漏れ聞こえてくるのが少々気になった。

海を挟んで対岸に見えるのが島原半島雲仙普賢岳。かつては噴火による火砕流で大きな被害を出したというが、ここしばらくは比較的平穏を保っている。ちなみに長崎から車で熊本を目指す場合には、島原半島からフェリーというルートもある*3。時々キャンペーンを実施していて、過去に1-2回利用したことがあったような。

かもめ25号 長崎本線 車窓

進行方向左手に島原半島が見える

そうこうしているうちに列車は海沿いを離れ、肥前山口から40分ほどで諫早(いさはや)駅に到着。同駅は新幹線も停車するため、大規模な改築工事がちょうど終わったところ。駅構内も以前とはだいぶ雰囲気が変わったように見える。ところで、駅近くにあったあまりグローバルに見えないグローバルホテルは何者だろうか。

かもめ25号 長崎本線 諫早駅前

(@諫早駅)諫早以外に店舗はあるのだろうか

諫早を出て長崎までの間の長崎本線には2つのルートがあって、1つが市布経由で、もう1つが長与経由。今回通過する「市布経由」が新線で、長大トンネルで一気に突っ切るため旧線と比べて距離が約7km短い。すでに2つの路線が存在するところに新幹線が開業し、1つの会社が運営する路線が3つ併存することになるから、ある意味えらく鉄道路線が充実している区間

ともあれ、列車は携帯電話の通じないトンネルをしばらく走り、トンネルを出たところで長崎市内の浦上駅に到着。同駅はターミナル駅ではないものの、結構な数の乗客が下車していった。

これまで同駅からは博多まで乗換なしでアクセスできた訳だが、鉄道利用では新幹線の開業によって一旦長崎駅諫早駅のいずれかまで移動する必要が生じている。割とこの手間は大きいように感じられ、同駅前には天神・博多駅に直通する高速バスの九州号が走っているから、乗客の逸走の具合も気になるところ。

浦上駅からは2-3分で終点の長崎駅に到着。座席を立った時点ですでに誰もいなくなっていたが、窓の日除けの様子を見るに比較的多くの乗客が利用していた様子が推察される。ちなみにグリーン車の座席も背もたれが2段階にリクライニングするため、快適性は今回のDXグリーン車に勝るとも劣らない。

(グリーン車利用時の記録がこちら)

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かもめ25号 グリーン車

グリーン車も十分快適な設備

長崎駅の在来線ホームは近頃立派な駅舎が完成したばかりだが、計画通りとはいえ利用開始から2年と経たずに特急列車が来なくなり、電化設備も剥がされてしまうのはちょっと勿体ない。ちなみにこれを見越してホームの一部は仮設になっていて、新幹線開業後は取り壊されるんだとか。

JR長崎駅 かもめ25号 787系

(@長崎駅)この時新幹線は停車していなかった

西九州新幹線はかつての九州新幹線部分開業時と同様に、乗継ぎ後の列車の行先を表示しているから新幹線開業後も引き続き「博多」の文字は見られるが、在来線でこの風景が見られるのは9月中旬までで、個人的にはこの日が見納め。

JR長崎駅 かもめ25号 787系

(@JR長崎駅) 列車は約20分で折り返していく

駅舎を出ると元来在来線の駅があったところに駅前広場を造成しているが、ここはまだ大規模な工事中。せっかくなら駅舎近くまで路面電車を引き込めばよかったのにと思わないでもないが、そうはならないようで、最終的にどのような姿になるかが興味深い。

JR長崎駅 2022年9月時点

(@長崎駅)駅前は引き続き大規模な再開発中

最後に、今回乗車したDXグリーン車を含め、昨今の経営状況を受け2023年4月1日の購入分から各種グリーン料金について値上げが発表されている。100km以内は250円程度で収まっているが、201km以上では従来3,770円のDXグリーン料金が6,150円、グリーン個室が5,140円から8,380円と結構な値上げ幅となっている。JR九州のこの類の料金は元々が安かったとも言えるが、それにしても中々のインパクトがある。

というお話。

*1:かつては「トップキャビン」という区画で、2人の向かい合わせ、4人の向かい合わせの座席が設置されていた。

*2:鹿児島で近頃引退した旧型車両に乗ると台車のバネの底を突くほどの振動だったから、この辺りのほうが相対的に見ればまとも。

*3:熊本フェリー九商フェリー有明フェリーの3航路と、島原と天草を結ぶ航路がある。