日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗船記】フェリーなんきゅう1便(根占港/山川港)


■Sponsored Link

便名 : フェリーなんきゅう1便
日付 : 2024/11/xx
区間 : 根占港(09:00)→山川港(09:50)
所要時間 : 00:50
乗車クラス : 普通席
運賃 : 800円+車両運賃(現金決済)
運行 : なんきゅうドック

大隅半島にある「フェアフィールド•バイ•マリオット•鹿児島たるみず桜島」に宿泊したのち、午後は薩摩半島側に用事があった。

こういった場合、通常は鹿児島市内の鴨池港と垂水港を結ぶ鴨池•垂水フェリーか、鹿児島市内と桜島とを結ぶ桜島フェリーを利用することが一般的だが、今回は南下して根占港に向かい、指宿市の山川港へ向かう「フェリーなんきゅう」を利用することに。

(事業者の公式サイトはこちら)

nankyu-ferry.com

(宿泊先についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

(鴨池•垂水フェリーについてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

(桜島フェリーについてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

フェアフィールド•バイ•マリオット•鹿児島たるみず桜島 建物外観

道の駅たるみずはまびら/同ブランドの中では小規模なホテル

ホテルから根占港までは国道220号線、県道68号線、国道269号線と走って1時間弱で、出港時刻の約30分前、08:30頃に到着。待機スペースには既に10台以上の車が乗船を待っていた。

■地図情報

この航路、繁忙期以外は前日までに電話することで予約することも可能だが、先着順、飛び込みで利用するのが基本。なお、使用される船舶はいわゆる「フェリー」の中ではかなり小型で、大型車を2台載せると乗用車が6台のみ、乗用車のみでも18台しか積載できない。

(事前予約については公式サイト参照)

nankyu-ferry.com

待機スペースに車を停めて乗船券発売所に赴き、乗船券を購入。「券」といってもかなり簡易なレシートで、それも建物を出たところですぐに係員さんに回収されたから、手元に持っていた時間はわずか3分ほど。なお、窓口では現金のほかは鹿児島県ローカルのQRコード決済システム(PAYどん)のみ利用可能。どうにも鹿児島県は全体として決済手段ガラパゴス化している。

フェリーなんきゅう 根占港 フェリーターミナル

根占港/本数は少ないが路線バスも乗り入れる

この根占港へは鹿児島交通の路線バスが乗り入れていて、大隅半島の中心地である鹿屋(かのや)までの路線が走っている。最も便数の多い平日でも運行本数は5便だが、早朝の2本を除く3本は山川港からの到着便受けで出発するようで接続は良好。ちなみにここから鹿屋までの所要時間は約50分ほど。

フェリーなんきゅう 根占港 バス停

根占港/バスの本数は日に5本

同航路は夏と冬で便数が異なっていて、便数の少ない冬期間は日に4往復の運航。逆U字型をしている鹿児島県本土、それも薩摩半島大隅半島の両先端部分を結んでいるため、仮に陸路で向かうとすると160km近く走って迂回しなければならない。そんな状況ゆえ、思いの外この航路の需要というのは厚く、しばしば満車になることも。なお、1隻で運航されているので代船がなく、検査期間は運航がなくなるので注意。

フェリーなんきゅう 根占港 乗り場建屋

根占港/夏場の方が本数は多い

乗船券発券場は2階に上がれるようになっているが、2階はベンチが置いてあるのみのがらんとした空間。ちなみにこの「兵六餅」というのは「ぼんたん飴」を販売しているセイカ食品が販売している商品で、海苔粉、きな粉、抹茶粉、白あんなどを練った飴菓子。好き嫌いあると思われる味だが、路線バスにもラッピングされている車両がいたり、割に人気の高い商品らしい。

(「兵六餅」についてはこちら)

www.seikafoods.jp

フェリーなんきゅう 根占港 待合室

根占港/兵六餅は中々特徴的な味

殆どが車で乗船していて徒歩利用者の多くない航路だけあって、客室はかなりコンパクト。ジェットフォイルと同じような、リクライニングしない椅子が設置された部屋があり、正面にはテレビ番組を放映している大きめの液晶テレビが設置されていた。

ちなみに今回乗船した「フェリーなんきゅう」を含む錦江湾内のみを走るフェリーでは、荒天時を除き航行中も自動車内で待機することが可能。このような仕組みの船を「バスフロート船」と呼ぶらしい。

フェリーなんきゅう 船内

フェリー船内/座席数はあまり多くない

鴨池•垂水フェリー 「バスフロート船」の案内

(参考)鴨池•垂水フェリーの「バスフロート船」案内

根占港出港時、進行方向左手側には鮮やかな生簀のような施設が見えた。この辺りではカンパチの養殖が盛んなようで、「ねじめ黄金カンパチ」として売り出している模様。この生簀もその一部だろうか。

フェリーなんきゅう 根占港 養殖生け簀

根占港/養殖用と思われる生け簀が並んでいる

船が航行し始めると、進行方向正面には薩摩富士こと、形の整った開聞岳の姿が見えてくる。両地点間の直線距離は約10kmで、所要時間は50分ほど。湾内ではあるものの船が小さいことに加えて外海に近い位置にあることもあって、時折大きく揺れる瞬間も。

フェリーなんきゅう 根占港 錦江湾越しの開聞岳

根占港/対岸の薩摩半島までは約10km

フェリーの最大速力は10.5kt(約20km/h)と自転車程度の速度だから、待てども待てども開聞岳はなかなか近づいてこない。ちなみに国内最速のフェリーは日本海を走る「はまなす」「あかしあ」で、今回乗船した船の約3倍、30.5kt(約56.5km/h)なんだとか。

前述の通り、この船は錦江湾の入口を横断していて、鹿児島市から離島へ向かう10以上の航路と直交しながら進んでいる。貨物船はともかく、旅客船がここまで多く行き交う場所というのは中々珍しいかもしれない。

フェリーなんきゅう 根占港 錦江湾越しの開聞岳

フェリーなんきゅう/自転車程度の速度で走る

ようやく陸地が近づいてきたあたりで車両甲板に戻り、車内で待機。今回のような涼しい時期は車内で待機するのも容易いが、夏場はいくら窓を開けていてもたちまち室温が急上昇するから、乗りっぱなしというのも中々難しい。

所要時間は50分ということになっているが、09:50よりもいくらか早く下船が始まった。船を降りて少し離れたところから船体を眺めてみると、普段乗船するフェリーなんかよりもだいぶ小さいのがわかる。広島県の宮島口と、厳島神社のある宮島とを結ぶ連絡船と同じくらいだろうか。尤も、大きさは同じでもあちらは3層構造になっているが。

フェリー乗り場の至近には路線バス「山川桟橋」バス停が開設されていて、本数は少ないものの鹿児島市内までバスで移動することもできる(所要時間約2時間)ほか、バスはJR指宿枕崎線山川駅指宿駅などを経由するため乗換えも可能。

■地図情報

加えて以前は船着場から鹿児島空港までの空港連絡バスも運行されていたが、乗務員不足の煽りを受けて運行区間指宿いわさきホテルまでに短縮されてしまい、現在ここまではやってこない。そのいわさきホテルは2025年に休館するそうで、更に短縮されるのかもしれない。

フェリーなんきゅう 山川港 船体全景

山川港/かなり小さめの船体

フェリー乗り場から指宿市街方面へ向かっていくと、道路端の手の届きそうなところにジェットフォイルが陸に上げられていた。塗装から推測するに、鹿児島市種子島屋久島を結ぶ高速船「ロケット」だろうか。新しい船でも1994年登場ともう30年を超えているが、いつまで現役でいられるやら。中々代わりになる乗り物は簡単には見つからなさそうだが。

山川港 高速船トッピー

山川港付近/本土と種子島屋久島の間の主要移動手段

山川港からは鹿児島名物「そうめん流し」のある唐船峡公園まで車で20分ほど。他県にはない独特の文化なので、一度訪れてみるのも良いかもしれない。時間があれば、指宿温泉で「砂蒸し風呂」を試してみるのもおすすめ。

(鹿児島名物「そうめん流し」についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

若干船が小さく、少し早めに港に着かないと安心できないのが玉に瑕だが、陸路ではかなりの遠回りになる大隅半島-薩摩半島間の移動の際にはかなり便利なので、覚えておいても損はないはず。

というお話。