日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗車記】TMライナー(水戸駅南口/土浦駅東口)


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便名 : 便名なし
日付 : 2025/08/xx
区間 : 水戸駅南口(17:50)→土浦駅東口(19:30)
所要時間 : 01:40
乗車クラス : 普通席(座席定員制)
運賃 : 1,070円(交通系ICカード決済)
運行 : 関東鉄道バス

猛暑日という言葉では足りないほど暑い日ととんでもない豪雨が交互にやってくる2025年の夏。ここまで異常気象と呼ばれるような気候が続くともはやこれは平常なのかもしれない。

そんな8月のとある日、やって来たのは茨城県の県庁所在地である水戸市。往路は東京駅から高速バス「みと号」を利用して来たから、復路は別のルートを模索した結果、見つかったのはJR水戸駅つくばセンター(TXつくば駅)、JR土浦駅の間を結ぶ「TMライナー」。

(事業者公式サイトはこちら)

www.kantetsu.co.jp

水戸駅南口のバス乗り場付近

水戸駅南口/駅前は割と栄えている

バスは以前乗車した羽田空港茨城空港へ向かう空港連絡バスや、往路に乗車した高速バス「みと」号などが発着する水戸駅南口のバス乗り場からの出発。以前は偕楽園始発の便などもあったようだが、2025年現在では全て水戸駅始発になっている。

(同じ乗り場から出発する別路線についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

biketourist.hatenablog.com

バス乗り場は円型になっていて、その外周には待機用の停車枠がいくつか設置されている。何台かバスが待機していたが、その中でも目を惹くのは通常の関東鉄道のバスよりもいくらか濃い色をした路線バスの車両。

どうやら2023年に創業100周年を迎えた際に、水戸•土浦•守谷の各地区に1台ずつ、別々の復刻デザインの車両を配備したらしい。水戸地区は「鹿島参宮鉄道」デザインのバスで、これを応用したのが現在のデザインなんだとか。

水戸駅南口のバス乗り場付近

水戸駅南口/現行塗装の元になっている

乗車する17:50発の便に使用される車両はつくばセンター15:00発の便で16:20頃水戸駅南口に到着し、1時間30分ほどここで待機する運用になっている模様。運転士さんは停車している間バスから離れることもできない訳で、なかなか大変そうな。

水戸駅南口のバス乗り場付近

水戸駅南口/2020年に登場した13列車

出発時刻5分前にバスが待機スペースから動き出し、4番乗り場に着車。水戸からつくばへは鉄道で直接アクセスすることができないこともあって、意外と始発からの乗客も多く10名前後が乗り込んだ。

ちなみにこの便で使用されるのは国内最大、縦13列配置のエアロエース。化粧室を設置した上で補助席込みで60名の乗車が可能と収容力に全振りした仕様の車。短距離の運用に特化している関係で、「水戸の梅」をイメージしたピンク色が印象的な正座席は薄型化され、リクライニング機能が設けられていない。また、通路側の肘掛けには一般的な路線バスと同じような簡易的なものが設置されている。

今回は最前列を確保したが、通常比較的足元に余裕のある最前列も仕切壁が目前に迫っていて、しっかり座らないと膝が壁に当たってしまいそうな位置関係。LCCの普通席とほぼ同等か、それより気持ち余裕がある程度、といえばイメージが伝わるだろうか。ちなみに座席は硬めで、見た目通りの掛け心地。

関東鉄道バス TMライナー 60人乗りのエアロエース

TMライナー/座席のリクライニングは不可

この日は雨が降っていた事もあって水戸市内の交通状況が悪いうえ、交差点を右折するたびに信号に2度3度と引っ掛かったことで遅延が拡大していった。バスのルートに右折が多いことも災いしている。

TMライナー」の途中停留所は石岡バスストップまで乗車専用で、そのうち「昭和自動車教習所前」「県庁バスターミナル」停留所でそれぞれ20人弱が乗車。どうやらメインターゲットは県庁からつくば方面へ帰宅する県職員と思われ、最も乗客が多くなると思われるこの便に座席定員が多い車両を割り当てている模様。

いずれにしてもどんどん遅延は拡大し、約15分遅れで「県自動車学校」停留所に到着し、5名程度が乗車。これだけ乗車しても補助席は使用されなかったことを考えれば、この車両は期待した目的を最大限果たしているともいえる。ともあれ、バスは茨城町インターチェンジ(IC)から北関東自動車道へ入った。

高速道路の交通量は多いものの渋滞とまではいかず、流れに乗って走行。常磐自動車道は2023年以降岩間ICから桜土浦ICまでの約30kmが110km/h制限になっているが、往路の「みと」号ともども、バスは引き続き100km/h程度で運行されている模様。

TMライナー 常磐自動車道の車窓

常磐自動車道/交通量は比較的多め

桜土浦ICで高速道路を離れ、学園東大通り(茨城県道55号線)経由でつくばセンターへ。この辺りは比較的新しい街だけあって、異様に街が整然としている。降車停留所は数100mごとに設置されていて、それぞれの停留所でまとまった数の降車があった。

この通りの進行方向左手にはJAXAの宇宙センターをはじめとした種々の研究機関の施設がある。街全体としては150近い研究機関があるんだとか。

TMライナー JAXAの施設入口

つくば市内/道中も研究施設が多い

そうこうしているうちに、バスは約20分遅れで19:30頃「つくばセンター」バス停に到着。バスは土浦駅行きだが、乗客は私を残して全員が下車して行った。そんな状況もあって、2025年9月のダイヤ改正では全便がつくばセンター止まりとなり、土浦駅東口からつくばセンター区間は廃止されるそう。

この「つくばセンター」は東京駅や羽田空港、関西方面からのバスも発着する比較的大きなターミナル。この地下にはつくばエクスプレス(TX)のつくば駅があるのだが、TXが開業したのが2000年代に入ってからで先にバスターミナルが存在したせいか、はたまたかつて存在した筑波鉄道の筑波駅との呼び分けのせいか、いずれにしてもバスの行き先として「つくば駅」と呼ばれる機会は少ないか、ほぼないような印象。

(羽田空港からの連絡バスについてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

バスはつくばセンターを出発すると右折、茨城県道24号線(土浦学園線)に入り終点の土浦駅東口へ向かう。この道は途中地下道もあり、県道にしてはずいぶん高規格。ちなみにこのトンネル内には「吾妻」の降車停留所があるが、乗客は他にいないため通過した。

桜川を渡る手前で国道6号線と交差するが、この辺りが日本三大花火大会として知られる「土浦の花火」の打ち上げ会場。他2つ(長岡•大曲)の花火大会と比べて都心からの距離が近いこともあり、人口14万人ほどの土浦市に60-70万人の観客が訪れるとか。

桜川を渡った先から土浦駅東口までの3kmほどは高架道路「土浦ニューウェイ」があり、信号なしに向かうことができる。それゆえ、花火大会の際には自家用車の通行はできず、シャトルバスの専用道路として運用されるとか。

なお、先のトンネルと同様、高架橋上には「田中町」「桜町四丁目」「川口町」の3つの停留所があるのだが、この停留所を利用するバスは1日を通して片手で収まる程度の本数しかない。殆どの路線バスは高架下の道路を走っているから、いつからかほぼバス停としての役目は果たしていなさそうな。

土浦駅東口 土浦ニューウェイ入口

土浦駅東口/「土浦ニューウェイ」は信号のない3kmの高架道路

つくばセンターから土浦駅東口の所要時間は20分とされていたが、比較的順調だったこともあって15分ほどで走破。終点の土浦駅東口バス停には15分遅れの19:45頃に到着した。

土浦駅発着の一般路線バスの大半は反対側の西口発着だが、高速バス、空港連絡バスはいま通ってきたルート、土浦ニューウェイでつくばセンターへ向かうことから東口を発着する。それにしても、どうやら乗り場の看板が暫く更新されていないようで、すでに廃止された路線まで表示されているのはご愛嬌か。

土浦駅東口 TMライナー乗り場

土浦駅東口/このバス停に来るのは8月いっぱい

この時、隣の乗り場には20:00発の成田空港行き空港連絡バス「NATT'S」が停車中。成田空港に到着するのは21:00過ぎの様で、ずいぶん遅い時間の便だが、利用者はいるんだろうか。所要時間が3時間も4時間も掛かるならともかく、終点の第1ターミナルまで乗っても1時間30分ほどの所要時間で、翌朝は翌朝で05:00発の便がいるから、敢えて前泊する必要もなさそうだが。

ちなみに今回乗車してきた「TMライナー」を運行する関東鉄道も、件の「NATT'S」を運行する京成バス千葉イーストも同じ京成グループで、2025年8月現在ではバスは会社名の表示以外全く同じ塗装で、小さく記載された会社名がなければどこの会社か全くわからない。2025年4月の合併前は千葉交通によって運行されていて、当時は独自塗装で分かりやすかったのだが。

土浦駅東口 TMライナー、空港連絡バスと東横イン

土浦駅東口/成田空港行きは意外と本数多め

土浦駅東口から駅改札口までは貨物駅を跨ぐ必要があるため少し距離があり、その途中には自転車旅行車向けのちょっとしたスペースが。土浦駅からは筑波山霞ヶ浦のいずれにも出られるから、自転車旅行の拠点として売り出していて、旧駅ビルを活用したホテルは客室まで自転車が持ち込めるようになっている。

(詳細についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

JR土浦駅 自転車用設備

JR土浦駅/山も湖もある自転車向きの街

ずっと気になっていた13列のバスに乗車することができて個人的には満足したが、快適かというとコメントが難しい。運転士不足と収容力の維持を両立させるためには仕方ないのかもしれないが。いずれにしても、つくば-水戸間として考えれば暫く安泰そうな路線。

というお話。