日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗車記】流鉄流山線60列車(流山/馬橋)


■Sponsored Link

便名 : 流鉄流山線60列車
日付 : 2023/07/xx
区間 : 流山(13:56)→馬橋(14:08)
所要時間 : 00:12
乗車クラス : 普通車自由席(全席自由)
運賃 : 200円(現金支払)
運行 : 流鉄

千葉県の松戸や柏のある辺りを東葛(とうかつ)地域なんて呼んだりするのだが、その東葛地域を走る全長10km弱のローカル私鉄がある。それが今回乗車する「流鉄流山線」で、常磐線の馬橋(まばし)駅と流山駅の間を結んでいる。少し前まで「総武流山電鉄」だったはずだが、いつのまにか「流鉄」になったらしい。

(同社公式サイトはこちら)

ryutetsu.jp

あまりにさっぱりとした同社の決算報告を見るに、鉄道事業が年商約3億円、付帯事業が同約2億円で、鉄道事業の赤字を付帯事業でカバーしているような格好。付帯事業が何なのか分からないが、不動産業も営んでいるというから、それだろうか。余談ながら、この事業規模は「ぬれ煎餅」でお馴染みの銚子電鉄とほぼ同じくらい。

そういえば、おおたかの森駅から乗車した南流山駅行きの東武バスは「春日部」ナンバー。吉川営業所が担当していることによるもののようだが、越県路線が少なくなったいまでは、一般の路線バスで隣県ナンバーの車両が営業するというのはちょっと珍しいような。

流山おおたかの森駅 東武バスセントラル 春日部ナンバー

流山おおたかの森駅/ 春日部ナンバーのバスがやって来た

ともあれ、若干遅れて到着したバスに乗り約15分の「流山市役所入口」で下車し、10分ほど歩いて流山駅までやって来た。

関東の駅百選」に選定された同駅は大通りから少し奥まったところにあり、駅前の自動販売機にかかる屋根ともども、時代に取り残されてしまったかのような外観をしている。余談だが、駅周辺には新撰組にゆかりのある史跡がいくつかある。

流鉄流山線 流山駅 駅舎外観

流山駅/ 自販機にかかる屋根が懐かしい

■ 地図情報

駅舎内も外観同様の雰囲気だが、さすがに券売機は押しボタン式ではなくタッチパネルだった。一昔前はボタンの沢山ついた券売機を見かけたものだが、いつしか駅では全く見なくなってしまった。そういえば、数年前訪れた台湾ではまだ現役だった。

流鉄流山線 流山駅 駅舎内

流山駅/ 券売機だけ新しい

前述の通り年商3億円程度、日当たりにすれば80万円程度の中小私鉄ゆえ、交通系ICカードやクレジットカードは利用不可。公表されている国交省の資料によると、交通系ICカードの導入コストはバス事業者(43台所有)で85百万円のようなので、同社にしてみれば割に合わない投資ということなのだろう。

流鉄流山線 流山駅 駅舎内

流山駅/ 券売機・窓口ともに現金のみ対応

乗車券を購入して改札を抜け、ホームに出てみると2番線には電源を落とした「若葉」号が留置されていた。同社の車両はここしばらくはすべて西武鉄道の中古車で、編成ごとに異なるカラーと名称になっているのが特徴。

流鉄流山線 流山駅 ホーム

流山駅/ 1面2線で1線は車庫代わりに使用されている

駅の一角には小さな車庫があり、何両かが留置されている。見えるところにいるのは2018年に登場したピンク色の「さくら」号と、2013年登場の3代目「なの花」号。「さくら」号はしばらく走っていないのか、若干色が抜けているようにも見える。

流鉄流山線 流山駅 検車庫

流山駅/ カラフルな数両の車両が留置中

そうこうしているうちに折り返し13:56発となる列車が到着。やって来たのは先ほど車庫にいた「なの花」号の片割れ。これまで編成中の色合いは統一されていた流鉄だが、以前よりも保有車両が減少しているなかで2022年中に一部車両に故障が生じ、生きている車両を組にした結果、2色の混結になってしまったのだそう。

流鉄流山線 流山駅 ホーム

流山駅/ 「なの花」号がやって来た

ただ、この混結編成は思いの外人気だったそうで、同列車が運行されて程なくして、黄色と赤の組み合わせであることから「オムライス列車」の愛称が付され、列車の両端にはヘッドマークが設置されている。

流鉄流山線 オムライストレイン ヘッドマーク

流山駅/ オムライス柄のヘッドマーク

列車の窓には鉄道模型の主力メーカー、「KATO」こと関水金属の広告が掲示されている。そういえば、なぜ関水金属なのに「KATO」なんだろうと思ったが、どうやら創業者の名前が加藤さんらしい。

流鉄流山線 オムライストレイン 広告

流山駅/ 「KATO」は鉄道模型のメーカー

駅名標のフォントはずいぶんレトロだが、駅ナンバリング掲示されている辺りは令和仕様。個人的には「RN6」と言われてもどこだか分からないのが残念。

流鉄流山線 流山駅 ホーム

流山駅/ 昭和と令和のMix

ホーム中央にはかつて走っていた「流星」号を模した自動販売機。駅構内ではこちらの自動販売機のみが交通系ICカードに対応していた。

流鉄流山線 流山駅 ホーム

流山駅/ 自動販売機も流鉄仕様

駅は両端あわせて計6つで、所要時間は約12分。通勤通学路線ということで朝夕に本数が増えるダイヤ構成で、日中は20分間隔での運転。以前は3両編成の列車もあったが、いつの間にかすべて2両編成に統一されている。

流鉄流山線 路線図

路線図/ 路線延長はトータル約6kmほど

列車は流山駅を出発すると1分で次の平和台駅に到着。両駅の間は600mほどしかなく、流山駅を出発した時点ですでに駅の姿がはっきり確認できるほどの位置関係。

次駅「鰭ヶ崎(ひれがさき)」までは1.5kmほどあり、最初の1駅よりは少しスピードが上がる。ただ、保線はほどほどといった感じで、遠目から見た線路は結構な波打ち具合。それでもJR九州の在来線よりはましだが、それなりに揺れる。

流鉄流山線 車窓 平和台から鰭ヶ崎

平和台-鰭ヶ崎間/ 所々線路が波打っている

その鰭ヶ崎駅はJR武蔵野線つくばエクスプレス(以下「TX」)の南流山駅と徒歩10分ほど、約750mの距離。元より少子高齢化により乗客数が減少していたところ、2005年のTX開業により乗客がピーク時の半分になり、更にCOVID-19の影響を受けた2020年には1/3まで落ち込んだのだそう。

鰭ヶ崎駅南流山駅の位置関係

鰭ヶ崎駅の次は約800mで小金城趾駅。全線単線ゆえ、同駅では列車交換がある。若干色の抜けた近鉄特急のような色合いの「流星」号が既に停車しており、こちらが停車するとほぼ同時に出発していった。

流鉄流山線 車窓 小金城趾駅

小金城趾駅/ 下り列車が先に到着していた

小金城趾駅から先は少し駅間距離が長くなり、約1.1kmで幸谷(こうや)駅に到着。「幸谷駅」というと場所が分かりづらいが、JRの新松戸駅の殆ど目の前にあって、駅舎は「流鉄カーサ新松戸」というマンションの1階部分にある。

■ 地図情報

流鉄流山線 車窓 幸谷駅付近

幸谷駅/ ホームの屋根上にはマンションが建っている

駅はビルの狭間にあり、またJR武蔵野線の高架橋にかかっていて若干薄暗い。駅へ向かう道もかなり細いので、知らないと辿り着かないかもしれない。駅名標が線路側に設置されているというのも少し珍しい。

流鉄流山線 車窓 幸谷駅付近

幸谷駅/ 左手に進むとJR新松戸駅がある

幸谷を出ると次が終着の馬橋駅で、この区間が同線で最も駅間の長い約1.7km。走っていくと右側から左側に向け、線路が横切っていくが、これはJR武蔵野線南流山駅とJR常磐線馬橋駅とを接続する武蔵野線(馬橋支線)。

常磐線快速とすれ違うと程なくして馬橋駅に到着。ホームは1面2線だが、日中の列車はJR側のホームに到着することが多い。どうやら50年ほど前にはこのホームに常磐線が発着していた時代があったらしい。ちなみにこの先ではJRと線路が接続されていて、同線の新車(中古車)は西武鉄道からJR経由でここまで送られてくる。

流鉄流山線 車窓 馬橋駅付近

馬橋駅/ JR常磐線は各駅停車のみ停車

自動改札なんてものはなく、乗車券は駅員さんに手渡し。映っているのは乗車してきた列車で、馬橋駅側が赤い「あかぎ」号の車両。近寄ってみると以前に比べて少し塗装がくたびれ気味なのが少し気になった。これも経費抑制策のひとつだろうか。

流鉄流山線 車窓 馬橋駅

馬橋駅/ 平成よりも1時代昔の雰囲気

階段を上がるとJR線を跨ぐ連絡通路に繋がっている。ただ、JR側から来た場合の表示は「流山線」のみで、存在を知らなければ通りすぎてしまうかもしれない。

流鉄流山線 馬橋駅 入口

馬橋駅/ JRと流鉄は改札外の乗換え

馬橋駅ではJR線に乗換え。流鉄が日中20分おき、JR常磐線(各駅停車)が10分おきなので、流鉄→JRは上下いずれも5分程度の待ち合わせで乗換えができるのは便利でよい。気づけば駅西側に比較的大きなビルが建っており、さながら一昔前の「民衆駅」のよう。

流鉄流山線 馬橋駅

馬橋駅/ 常磐線との乗継ぎは良好

馬橋から一駅柏方向の新松戸まで戻り、武蔵野線で東京方面へ向かった。

何の気なしに久々訪れた流鉄だったが、その後この「オムライス列車」は2023年8月中の終了が公表されたようなので、もしこれを目当てに訪れるのであればお早めに。

というお話。