便名 : SLばんえつ物語(下り)
日付 : 2022/04/xx
区間 : 喜多方(15:51)→新津(18:43)
所要時間 : 02:52
乗車クラス : グリーン車指定席
運行 : JR東日本
※ 補足
JR磐越西線は2022年8月の豪雨災害によって喜多方・山都駅間で運転を見合わせている。この記事はそれ以前に乗車した際の記録。同線を取り巻く環境は厳しいが、心情としてはただただ一日も早い復旧を願っている。
この日は喜多方でお花見をしたのち、次の目的地へ移動する旅程。翌日以降はしばらくの間名古屋に用事があり、この日のうちに名古屋まで行っておく必要があった。
福島県の会津地方にある喜多方から名古屋までの経路を調べてみると、最速経路は磐越西線で新潟へ抜け、そこから飛行機で名古屋小牧飛行場へ飛ぶルート。磐越西線は本数が少なく、喜多方から新潟までは普通列車ではなくてSL列車で移動する。ちなみにこの手の臨時列車、先に飛行機を手配すると座席が確保できなかった場合に手痛いキャンセル料が発生するリスクがあるため、まず指定券の手配に着手し、座席が確保できたところで飛行機を手配するという手順が手堅い。
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当日は12時前に喜多方駅に到着し、駅から20分ほどのところにある「日中線しだれ桜並木」を見物。3時間弱で観光を終え、駅前で少し遅めの昼食を摂ってから喜多方駅へ戻って来た。喜多方はラーメンが有名な土地で、チェーン店としても展開されている「坂内」が駅構内にも看板を出している。
「SLばんえつ物語」号の下り列車は始発の会津若松駅を15:27に出発し、喜多方駅が2つ目の停車駅。時刻表上は15:50着で15:51発だが、この日は少し遅れて15:53頃到着し、乗客を乗せてすぐに発車した。
元々は普通車指定席を予約していたのだが、当日検索したところグリーン車にいくつか空きが出て、最終的にはグリーン車に落ち着いた。「えきねっと」は発券しなければ手数料なく変更ができるから、乗車駅に発券できる環境があれば出発直前まで発券しないほうが得策。なお、グリーン車は乗車時を含め、グリーン車へ入室するごとに指定券の呈示を求められるため、普段の列車よりも一層チケットは紛失しないように。
列車は機関車1両に客車7両の8両編成と、路線が平坦だからかSL列車にしては長編成。このうちグリーン車は新津側の先頭車両で、1列+2列の横3列配置。グリーン車が連結され始めたのは2013年のことで、このタイミングで車体を造り直したんだとか。
喜多方から新津までは約94.4kmで、SL列車にしては割と長距離。路線は阿賀川沿いを蛇行しながら西に向かうから、それほど速度は上がらずのんびりしたペース。ただ、他の路線と違うのは列車本数が少ないからか、途中で後続列車に追い越されるということはなく、それゆえ今回は乗換案内に最速経路として登場してきた。
喜多方駅を出発すると程なくして少し長めの鉄橋を通過。これが濁川に架かる「濁川橋梁」なのだが、この鉄橋が2022年8月の大雨の影響で崩落してしまった。この影響を受け、2023年1月の記事投稿時点では磐越西線の喜多方駅と野沢駅の間で運転を見合わせており、現時点でもなお復旧の方法と時期が決定していない。
着席してすぐだったこともありそれほどつぶさに車窓を眺めていた訳ではないものの、河川敷が割と広めで川の流れは穏やかなような印象があった。一方で、川の名前を「濁川」というところを見ると、結構な暴れ川なのかもしれない。2022年秋頃にはJR東日本がローカル線の収支を公表したこともあり、鉄橋の再建といった大がかりな出費が必要になる状況を勘案すると、同線の行く末が少し心配になるところ。
列車は上りの津川駅と山都(やまと)駅、下りの野沢駅と津川駅で各10分-15分程度の少し長めの停車時間がある。各駅では列車はホームから少しはみ出す形で停車するので、全体を眺めることができる。停車時間では点検や注油、給水などが実施されるので、これを眺めてみるのも面白い。
列車はすべての車両に座席がある、というわけではなく、1両まるごとラウンジの車両や売店のある車両なんかも組み込まれている。このラウンジ車両は形状だけ見ればかつて新潟地区も走っていた「トワイライトエクスプレス」に似たような車両があったような。
「ラウンジ車両」以外にも珍しい設備がいくつかあり、例えば会津若松から新津へ向かう下り列車の最後尾は普通車の「オコジョ展望車両」。子供用のプレイルームや展望室が設置されている。ただし、2022年4月の乗車時点では自由に立ち入ることはできず、整理券を配布しての時間制になっていた。
グリーン車の座席は前述のとおり1列+2列の横3列配置。前後間隔は十分だが、座席は背中から頭にかけての部分が少し薄く、しっかり腰かけるとちょっと変な姿勢になってしまうのが少し気になった。利用する人間の体型は千差万別だが、座席の設計というのはどうやってしているんだろうか。
普通車の座席は元々の座席を改良したボックスシートで、元々のものよりだいぶ背丈が高くなっている。今回は1人で乗車したから普通車だとしても出来るだけ人のいないボックスがいいと思っていたが、この日は運が良ければ1人でボックスシートを占領することもできそうな乗車率だった。
ラウンジカーは外見通り、ガラスが大きくかなり眺望が良い。車両の隅には旧式のポストが設置されていて、ここから葉書などを投函することもできるらしい。なお、このポストから投函すると、専用の記念消印を押してもらえるのだとか。
編成中ほどの5号車には物販コーナーが設置されている。グッズはが多めで食事はあまり種類がないが、車内で追加調達が出来るだけありがたい。市中ではあまり見かけない微炭酸のブラッドオレンジジュースなるものを購入してみた。余談だが、この日初めて目にしたにも関わらず、移動ののち宿泊した名古屋のホテルの売店でも販売しているのを見かけた。
そんなこんなしているうちに2つ目の長時間停車駅である津川駅に到着。ここでは機関士さんが炭水車の上に乗って石炭の整理作業。幼い頃、炭水車は石炭で満たされているとばかり思っていたが、実際はほとんどが水で満たされていることを最近学んだ。
運転席を見ると、最近の鉄道車両では見ないほどレバーやメーター類が並んでいて、鉄道車両というよりは工作機械を見ているような気になる。この路線、道中はトンネルも多いが、このカーテンで遮れるものだろうか。
ところで、この津川駅はホーム中央に「オコジロウの家」なる施設が設置されている。この「オコジロウ」というのはばんえつ物語号のイメージキャラクターなんだとか。建物内には切り株型のベンチや暖炉が設けられている。
同駅ホーム反対側の側線には保守用の車両が停車していた。元々はJRが東海が開発した車両のようだが、近頃JR東日本でもこれをカスタマイズして導入しているそうで、東日本でもこのような見た目の車両がずいぶん増えてきた。
列車は津川駅出発後もしばらく阿賀川沿いを走っていく。当時は首都圏ではもうそろそろ初夏が近づいてくるような時期だったが、新潟県の山間部は春にも少し遠そうな雰囲気。山々はまだ雪に覆われている。
序盤から中盤にかけては山や林のなかを走っている時間が長かったが、新津が近づいてくるにつれて徐々にひらけた場所を走っていく時間が長くなってきた。この頃には日没が近づいて来て、暖色系の車両の照明と相まって中々よい雰囲気。
リクライニングを深めに倒して天井に目を向けると、照明にはところどころに先程津川駅で見た「オコジョ」の姿があることに気づいた。この頃、割と長時間走ってきたからだろうか、この頃の車内は早朝の夜行列車のようなちょっと気だるい雰囲気が漂っている。
平野部に出れば季節が早回しされたようなり、春が戻ってきた。線路沿いは水を張ったばかりの水田があちこちに見える。だいぶ暗くなってきて携帯電話のカメラでは手ぶれがなかなか止まらないが、水鏡に映る夕焼けが綺麗。
これだけの長距離ゆえ少しくらい遅延するかと思いきや、意外にも?定刻通り終点の新津駅に到着。乗換え先の新潟行き列車までは10分強の時間があり、隣のホームに移って車両見物。だいぶ暗かったせいか、いずれのホームでも見物客は割と少なくのんびり眺めることができた。
ちなみにグリーン車はこんな感じ。先頭部分は展望室になっていて、グリーン車の乗客のみしか立ち入れない。それゆえ、それほど混まないのはいいところ。ただ、さすがに全員入れるほどのスペースはないから、空気を読んで譲り合って利用する必要がある。
そんなこんなしているうちに乗継ぎ先の新潟行きの出発時刻が近づいてきた。この列車に乗り遅れると新潟空港20:25発の飛行機には間に合わないから、乗り遅れるわけにはいかない。