日本の迷い方

旅の知恵袋になりたい、という話

【乗車記】スペーシアX9号(浅草/下今市)


■Sponsored Link

便名 : スペーシアX9号
日付 : 2024/06/xx
区間 : 浅草(14:00)→下今市(15:40)
所要時間 : 01:40
乗車クラス : コックピットラウンジ
運賃 : 3,840円(クレジット+交通系ICカード決済)
運行 : 東武鉄道

東武鉄道が現行「スペーシア」の後継として開発し、満を持して登場した「スペーシアX」。2023年7月の登場から間もなく1年が経過するも、人気は衰えることなく週末や連休には中々チケットが確保できない状況が続いている。今回は相対的に空いているタイミングを狙い、平日に日帰りで往復することに。

(事業者公式サイトはこちら)

www.tobu.co.jp

さて、やってきたのは始発の浅草駅。自動改札口前には以前の浅草駅に掲げられていた看板と同じような字体の手書き看板が掲示されていた。よくもまあここまで綺麗に手書きできるものだと感心してしまう。

なお、看板にも記載のある通り、改札を抜けてしまうとあまり買い物をできる施設はないので、何か必要な場合は改札通過前に購入しておくことをおすすめ。改札の目の前にはタリーズコーヒーなんかも出店している。

東武浅草駅 改札口前の掲示板

東武浅草駅/ 駅構内の購買施設は少なめ

今回乗車するのは鬼怒川温泉行きの「スペーシアX9号」。登場から徐々に数を増やし、2024年6月現在では最大で日に6往復が運行されている。現時点ではJR線への直通列車はなく、全て浅草駅から東武日光駅、もしくは鬼怒川温泉駅との間を結んでいる。

始発の浅草駅は特急専用ホームの3番線、4番線に加え、スペーシアX専用の5番線が用意されていて、中間改札で特急券を呈示して入場する仕組み。かつては快速列車がここを発着していたとか。

東武浅草駅 5番線ホームの電光掲示板

東武浅草駅/ 通常の特急列車は3•4番線から出発

今回乗車する列車は上り「スペーシアX4号」として13:45に浅草駅に到着しており、改札を抜けたタイミングではまだ車内清掃中。窓の大きさが印象的なデザインは近鉄の特急「ひのとり」やつい最近運転区間が短縮されたばかりのJR西日本の特急「サンダーバード」や「しらさぎ」に使用される681/683系車両とどこか似ているようにも見える。

(近鉄「ひのとり」についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

(「しらさぎ」用の681系がこちら)

biketourist.hatenablog.com

東武浅草駅 5番ホームとスペーシアX車両

東武浅草駅/ 赤く塗れば「ひのとり」とそっくり

木材を多用した駅ホームからは列車の全貌が見えないが、改札に近い浅草方の先頭車は個室になっていて、六角形の窓が印象的。窓の周囲に三角形のデザインを配することで、「X」模様に見えるようになっている。それほど大きくない窓が大きく見える効果もありそう。

東武浅草駅 5番ホームとスペーシアX車両

東武浅草駅/ 窓は「X」模様になっている

ご存知の通り浅草駅は急カーブの先(というよりも最中)に設置されているため、同駅に停車できる列車は最も東側の1本を除いて6両編成が上限。北千住方に進むにつれてホームもカーブしていて、前方の2両については出入口にスロープが設置されている。

東武浅草駅 5番ホームとスペーシアX車両

東武浅草駅/ 先頭車両の停車位置はカーブにかかっている

そのスロープというのがこちら。余談ながら普通列車側のホームはもっと隙間が開いているのだが、10年ほど前までは気にせずドアが開いていた。ただ、近年の安全意識の高まりからだろうか、現在は北千住方の車両はドアが開かないようになり、ホーム先端への立入りも禁止されている。

東武浅草駅 5番ホームとスペーシアX車両

東武浅草駅/ 補助板を利用して乗車する

さて、しばらくして車内清掃が終了して乗車。今回乗車する「コックピットラウンジ」は1人掛けから4人掛けまでのソファ(計14席)と、カフェが設置されている車両。このソファはフリースペースではなく、レギュラーシート料金+500円の指定席として発売されているのが特徴。

この車両に設置されているソファーは床に固定されてはいないが、急ブレーキをかけた場合でも動いたりすることのないような構造になっている。

東武スペーシアX コックピットラウンジ(1号車)

スペーシアX車内/ 列車内らしからぬ雰囲気

指定された座席に着くと、程なくしてカフェの店員さんが車両のルールについて案内しにやって来た。通常席を利用する場合、車両内に掲示されているQRコードから入店予約をして利用するが、この「コックピットラウンジ」と個室の利用者は予約なしに利用できるのだそう。

東武スペーシアX コックピットラウンジ(1号車)

スペーシアX車内/ 下りは下今市駅まで常時利用可能

ちなみにメニューはこんな塩梅。アルコールとおつまみ、甘味が中心で、食事の類は搭載されていない。なお、決済手段交通系ICカード、クレジットカード、一部のQRコード決済などのみで、現金は取り扱っていないので要注意。

東武スペーシアX コックピットラウンジのメニュー

スペーシアX車内/ メニューはアルコールとおつまみがメイン

なお、復路で個室を利用した際に、個室利用者は特急券を呈示すると何かしらのプレゼントがあるとの説明があった。個人的にはもう少し食事系のメニューがあると嬉しいのだが、乗車時間がそれほど長い訳でもなし、到着してから現地で食事を摂ることが想定されているのかもしれない。

東武スペーシアX コックピットラウンジのメニュー

スペーシアX車内/ メニューはそれほど多くない

隣のホームには伊勢崎線方面の特急「りょうもう」号の車両が停車中。この車両、見た目こそそれほど古さはないが、一部の機器は1950年代に製造された車両のものを引き継いでいるというから、間もなく70年が経過しようとしている。物持ちの良い東武鉄道とはいえ、そろそろ引退が見えてくる時期だろうか。

(「りょうもう」号についてはこちら)

biketourist.hatenablog.com

東武浅草駅 特急ホーム停車中のりょうもう号

東武浅草駅/ 隣のホームはりょうもう号が停車中

出発直前に運転士さん直々の挨拶があり、14:00ちょうどに浅草駅を出発。ゆっくりと隅田川を渡る際には、正面左奥にスカイツリーの姿が見えるが、正面窓の大きなスペーシアXを持ってしても高さ634mのタワーの全貌を収めるのは中々困難。

東武浅草駅出発直後の東京スカイツリー

東武浅草駅付近/ 近過ぎてスカイツリーは全体が見えない

進行方向右手にはジョッキに入ったビールを模したアサヒビールの本社ビルが見える。その横にある金色のオブジェが特徴的な背の低い建物もアサヒビールの建物で、「新世紀に向けて躍進するアサヒビールの燃える心の炎」のイメージなんだとか。どう見えるかはさておき、オブジェは全長44m、360トンの鋼材が使用されているらしい。

東武浅草駅出発直後の隅田川

東武浅草駅付近/ 左手のビルがアサヒビール本社

この辺りでカフェへ赴き、「ニッコーラ」と「酒粕のバターサンド」を購入。「ニッコーラ」はその名の通り?のクラフトコーラ。バターサンドは半解凍の状態で提供されるので、数分置いてからいただいた。

スペーシアX コックピットラウンジの飲み物と茶菓

スペーシアX車内/ 「ニッコーラ」と酒粕のバターサンド

浅草駅出発時点では半分程度の乗車率だったが、14:12発の北千住駅を出る頃には殆どの座席が埋まった。乗車は北千住から約20分の春日部駅までで一旦落ち着き、栃木駅以降は降車が中心といった感じ。

春日部駅は高架化工事の一環で上り線が仮ホームに移設された直後。これまで使用されていたホームは線路が剥がされ、取壊しの時を待っていた。なお、完成は令和13年度だそう。

東武春日部駅 高架化工事で使用停止された上りホーム

春日部駅/ 高架化工事のために上りホームは移設済

東武動物公園駅で館林や太田、伊勢崎方面へ向かう伊勢崎線と分かれ、日光線に進入。南栗橋駅近くで東北新幹線と交差し、栗橋駅JR東北本線をオーバーパスすると、程なくして築堤を駆け上がり、右カーブしながら利根川を横断。

一見するとここが県境に見えるが、実際には県境はもう少し先で、一瞬群馬県を掠めてから栃木県へ入っていく。なお、柳生駅近くでは日本国内では珍しい、埼玉、群馬、栃木の県境が1ヶ所に集まる「三県境」がある。

東武日光線 利根川の河川敷

東武日光線/ 栗橋駅通過後に利根川を横断

浅草駅から約70分、春日部駅から約40分で栃木駅に到着。県名を冠した駅ではあるが、同県の県庁所在地は宇都宮で、新幹線の停まる宇都宮駅と比べてしまうと栃木駅は小さめの地方都市といった感じの雰囲気。

駅名標は栃木県誕生150周年を記念してピンク色の特別なデザインになり、また、新栃木駅東武宇都宮駅とを結ぶ東武宇都宮線に「いちご王国ライン」なる愛称が冠された。ちなみに何の説明もなく中央下に鎮座しているのは「いちごモンスター」なる化け物らしい。

東武日光線 栃木駅の駅名標

栃木駅/ 宇都宮線は「いちご王国ライン」の愛称がついた

下今市駅では約10分の待ち合わせ時間のうちに一旦改札を抜けて上り列車に乗換えなければならず、少し早めに席を立ってデッキへ移動。せっかくなので少し他の車両を覗いてみることに。

プレミアムシートは2列+1列の横3列配置で、オレンジ色の座席に可動式枕が設置されていて、リクライニングは電動。全区間乗り通すとレギュラーシートに約600円の追加となるが、座席のグレードを考えれば割安かもしれない。

スペーシアX プレミアムシートの座席

スペーシアX車内/ プレミアムシートは1列+2列の横3列

また、レギュラーシートについてはこちら。先のプレミアムシートとともに、座席はシェル型になっているそうで、前席がリクライニングしても影響を受けないような仕組みになっている。なお、2020年代に登場した車両だけあって、各座席にはコンセント電源が用意されている。

スペーシアX レギュラーシートの座席

スペーシアX車内/ レギュラーシートは「ひのとり」風

大型の荷物についてはデッキにこのような鍵付きのロッカーが用意されている。客室外なので目が届かない点は少し気になるが、停車駅の少ない列車で施錠ができるとあれば、それほど気にする必要もないだろうか。私は利用するのを少し躊躇ってしまうが。

スペーシアX 大型荷物置き場

スペーシアX車内/ 荷物置き場は客室外だが鍵付き

化粧室は2両に1ヶ所くらいのペースで配置されているJRの特急列車よりも少なく、列車の前後端にそれぞれ1ヶ所ずつ。このうち、個室側のある浅草方の化粧室は車椅子対応なんかで広めの配置になっている。

スペーシアX 化粧室など

スペーシアX車内/ 化粧室は編成中に2ヶ所

新鹿沼駅(海抜約140m)を過ぎると徐々にカーブが増え、勾配も急な区間に入る。新鹿沼駅の次の停車駅で今回の降車駅となる下今市駅は標高が約380m。所要時間で約15分ほどの距離の間に一気に200m近くの高さを駆け上がるから、デッキで放映されている前方展望でも登っている様がはっきりと見て取れる。

スペーシアX デッキの液晶モニタ

スペーシアX車内/ 液晶モニタでは前面展望を放映中

特に徐行をしたとか、先行列車が遅れていたということはなかったのだが、新鹿沼から下今市までの間はダイヤに乗り遅れていたようで、下今市駅には3分弱遅れて到着。折返しは乗換えとして想定されているはずもなく、元々10分しかなかった乗換え時間が更にタイトに。

ちなみに下今市駅は同駅と鬼怒川温泉駅とを結ぶ「SL大樹」の始発駅ということでレトロ調にリニューアルされており、駅名標国鉄風のフォントで描かれている。また、駅構内の一角には「SL展示館」や「転車台広場」なども整備されている。

東武下今市駅 駅名標と普通列車

東武下今市駅/ 「SL大樹」は同駅から出発

乗ってきた列車はこの先東武鬼怒川線に入り終点の鬼怒川温泉駅を目指すが、同駅から先は単線のため、交換列車の待ち合わせでしばらく停車。程なくして乗車予定の上り浅草行き「スペーシア8号」が到着。進路が開通すると早速出発して行った。

東武下今市駅 鬼怒川線へ向かうスペーシアX車両

東武下今市駅/ 鬼怒川温泉駅まではここから約20分

レギュラーシートと比べて600円ほどの追加料金が必要になるものの、個室ほどの負担は必要ないので、せっかく乗るのであればこちらの方が面白いかな、という感じ。問題は席数が少ないことだが、平日や日曜日の午後などは直前でも空席が残っていることもあるから、うまくタイミングを調節すると利用しやすいかもしれない。いずれにしても、2時間ほどの所要時間があっという間だった。

というお話。