便名 : ふじかわ5号
日付 : 2025/08/xx
区間 : 富士(12:15)→甲府(14:03)
所要時間 : 01:48
乗車クラス : 普通車指定席
運賃 : 3,420円(クレジットカード決済)
運行 : JR東海
東京から修善寺、そこから三島、吉原と経由して岳南江尾駅へ向かい、そこから徒歩で東田子の浦駅に到着。この日は最終的に群馬に到達する必要があったのだが、とりあえずJR東海道本線で富士駅へ向かい、そこからJR身延線に乗換える。
(ここまでの移動はこちら)
そんな訳でやってきたのはJR東海道本線の東田子の浦駅。あまりJRっぽさを感じない駅名だが、開業は戦後間もない1949年と比較的古くからある駅。「東」とついているが、「田子ノ浦駅というのは存在しない。

東田子の浦駅から富士駅までは普通列車で2駅10分。この辺りの東海道本線は1時間に3本程度走っているが、6両編成の列車は常に混雑している。尤も当時は8月だったから、青春18きっぷの使い勝手が大幅に悪くなったとはいえ、幾らかは利用者がいたかもしれない。
この日東田子の浦駅から富士駅までは交通系ICカードで移動してきたが、この先乗車する予定のルートは当時交通系ICカードが利用できなかったため、改札外の指定席自動券売機で切符を購入。なお、2025年10月1日以降に富士駅から乗車して甲府駅で下車するような場合、途中に非対応エリアが含まれるものの交通系ICカードで精算ができるようになっている。
同駅で乗換えるJR身延線の特急「ふじかわ」は静岡駅と甲府駅の間を片道2時間20分程度の所要時間で1日7往復している。列車は指定席1両、自由席2両の3両つなぎ。

富士駅は東海道本線が2面4線、身延線が1面2線で計3面6線、それに側線などがあって割に大規模の駅。身延線のホームは行き止まりになっていて、静岡始発のふじかわ号は同駅でスイッチバックして甲府駅へ向かう。なお、静岡駅から富士駅までの所要時間は約30分程度のため、静岡駅時点では座席が進行方向と逆向きにセットされている。

今回は途中駅からの乗車ということもあって指定席を手配。今回はJR西日本の「e5489」で予約したが、無割引のきっぷであればJR東日本の「えきねっと」で予約することもできるとか。
ちなみに静岡から甲府の区間は中部横断自動車道経由の高速バスも運行されているが、現時点ではJR有利のようで高速バスは土休日のみ2往復だけの運転。所要時間はバスのほうが短く、また運賃もバスのほうが安価なのだが、便数が少ないのがネックだろうか。
(競合の高速バスについてはこちら)

そうこうしているうちに乗車する特急列車の出発するホームの向かいの乗り場に普通列車が到着。バリエーションの豊富な313系のなかでも珍しいボックスシートタイプの車両。お隣の東海道本線ではかつて有料快速列車に用いられていた車両も活躍している。
(元「セントラルライナー」の車両についてはこちら)
到着した車両は折返し準備を行い、特急列車の出発7分後に富士駅を出発する甲府行きになる模様。それほど最高速度の速い特急列車ではないのだが、特急列車の甲府駅到着が14:03なのに対して普通列車は15:18と1時間以上も所要時間に差がある。

この列車に使用される373系は登場が1995年で、今年2025年で30周年。先日引退したJR東日本の185系同様、普通列車から特急列車まで幅広く活躍している。かつては「ムーンライトながら」でお世話になったという方も多いのでは。
そんな373系車両の窓は少し変わった配置になっていて、車両端から2列で1枚の窓割りになっているものの、車両中央に座席1列分の小さな窓が入っている。その結果、甲府行きの場合は眺望の良い座席が車両前方は偶数番、中央から後方は奇数番というように変わるので注意が必要。

先代の165系車両が更新されたのも製造から30年程度だったようだが、今のところ後継車両の噂は上がっていない。JR飯田線の「伊那路」も今回乗車する「ふじかわ」も一定の利用者はいるようで、代替車両なく廃止ということはないと思うのだが。
ただ、「伊那路」の目的地である飯田はリニア中央新幹線が予定通り2027年に開業していれば、品川駅から45分、名古屋駅へも30分でアクセスできる予定だったから、本来は「伊那路」を廃止するつもりでいて、それもあって新車の導入が表沙汰になっていないというのもあるかもしれない。

そんなことを考えているうちに列車は富士駅を出発し、東海道本線を左に見ながら身延線へ。頻繁に重量の重い貨物列車の往来する東海道本線と身延線を比べると、線路の等級というのが違うらしい。単に列車の往来の頻度の差かもしれないが、道床の色も異なっている。
ただ、列車頻度の低い身延線側もぱっと見で線路が歪んでいるということはなく、この点は鉄道業に対するJRの東海が垣間見られるような。線路側の問題か車両側の問題か分からないが、JR九州の鹿児島近辺なんかは立っているのも座っているのもしんどいくらいに揺れる区間もある。

富士駅からしばらくの間は複線で、天気が良ければ列車の正面から右側にかけて富士山の姿を望むこともできる。あいにくこの日は曇っていて、姿を確認することはできなかった。一年を通じて、割と綺麗に富士山を望むことができるという日は多くない印象。
この路線、進行方向左側を取るか、右側を取るかは悩ましいのだが、富士山を見たいという場合は甲府に向かって右側のD席側を確保することをお勧め。ただし、その後の区間も含めて考えると、トータルではA席側の方が見栄えするような印象。

かつては大規模な団体列車の運行もあったという、大きな寺社のある富士宮駅で複線は終わり、単線区間に突入。駅近くには大きな鳥居の姿も見られた。単線区間の線路は身延線の大半の区間で富士川と並走しており、比較的ゆったりとしたスピードで進んでいく。

富士宮駅を出発した列車は次の内船駅まで約30分無停車。地図で見ると意外と静岡県と山梨県の県境は海から近く、富士宮駅を出て10kmちょっと、稲子駅と十島駅の間あたりを県境が横切っている。
列車は富士駅を出てから約1時間ほどで身延線としての中間地点となる身延駅へ到着。山間部のそれほど規模の大きくない町だが、ここから新宿まではCOVID-19感染拡大前は1日7往復、現在も1日3往復の高速バスが運行されている。新宿までの所要時間は3時間40分で、飯田から新宿と所要時間という面ではあまり差がない。

地味な難読駅名「鰍沢口(かじかさわぐち)」駅を過ぎると列車は甲府盆地へ差し掛かる。平均標高は300mほどと比較的高いが夏は暑く、冬は寒い気候で、雨が少ないのが特徴だとか。気候を活かし、桃やぶどうといった果物の栽培が有名なのはご存知の通り。

善光寺駅を過ぎたところでJR中央本線と合流し、身延線側にしか駅のない、地味な難読駅名の金手(かねんて)駅を通過すると終点の甲府駅に到着。駅近くにある国道のクランクを示す「鍵の手」が訛って「金手」になったらしい。
甲府駅ではJR東日本の中央本線とJR東海の身延線はホームが分離されていて、お城側、かつ新宿方にある身延線専用ホームに停車する。改札口から見れば200m近くあるから、出発時刻直前に改札を通過するようでは間に合わないかもしれない。
妙な場所にあるのは、元々身延線が私鉄で、国鉄駅に乗り入れる構造だったからだとか。駅前に城跡があるというと広島の福山駅なんかもそうだが、こちらは線路の脇に石垣があってレベルの違う近さ。

列車は甲府駅で約30分停車し、折返しふじかわ10号として14:35に静岡に向けて出発する。それほど速度の高い路線ではないからかつてほど距離が長くなることはないものの、運用によっては日に1往復半する編成もあるそうで、30年選手にして朝から晩まで中々の重労働。その勤続疲労が祟って、2025年の夏には飯田線で発煙騒動があったとか。

ここから先はJR東日本の中央本線の特急「あずさ」に乗換えて、塩尻駅を目指す。身延線のホームと中央本線の下りホームは繋がっていて、列車の進行方向へ歩いて行くと次の列車の乗り場に辿り着く。到着したタイミングは14:13発の小淵沢行き普通列車の出発直前で、ホームは多くの人で賑わっていた。

身延線のホームの一角にはひっそりと乗車券や自由席特急券を発売する「きっぷうりば」が設置されている。こんな小さなブースにもしっかり冷房が完備されているのは、この地域がいかに暑いかを体現しているようにも見える。
甲府近辺のJR身延線はこれまで紙のきっぷのみで、無人駅の多い身延線の列車到着時には精算所が混雑していたようだが、前述のとおり10月1日から全区間ではないものの交通系ICカードが利用できるようになるから、いくらかは混雑が緩和されるかもしれない。

所要時間では高速バスに敵わないものの、利便性の高さでJRに軍配が上がったように見える静岡-山梨間の移動。果たして次世代の特急列車は開発されるんだろうか。
というお話。