便名 : ユーカリが丘線•65/66列車
日付 : 2025/07/xx
区間 : ユーカリが丘(15:02)→ユーカリが丘(15:16)
所要時間 : 00:14
乗車クラス : 普通席
運賃 : 200円(現金決済)
運行 : 山万
首都圏の鉄道路線は大方乗り潰しが済んできたが、ちらほら未乗路線がある。その中のひとつが今回乗車した「ユーカリが丘線」。上野と成田を結ぶ京成本線のユーカリが丘駅から出ている路線だが、近くにありすぎるとかえって機会がないこともある。
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そんなわけで、京成本線のユーカリが丘駅へやってきた。住所としては佐倉市で、勝田台駅と佐倉駅の間に位置している。案外本数は多く、上下ともに10分に1本くらいの列車間隔。利用者はほぼ沿線住民だけだからだろうか、乗換案内の放送はされなかったような。
列車を降り、階段を上がって京成線の改札口を出ると、一見して他の鉄道路線があるようには見えない雰囲気だが、案内看板には「ユーカリが丘線」の表示がある。
この路線、始発は朝4時台、終電は23時台と早朝から深夜までコンスタントに運転されていて、日中は20分間隔の運行。京成本線の下りは都営浅草線方面からの快速が接続列車で、ユーカリが丘駅での乗換時間は3分。逆方向、上りは8分で接続している。実際に歩いてみると、下りの乗換時間3分は想像以上にタイトで、定刻通りでぎりぎりくらい。
京成線の改札口からユーカリが丘線の改札口までは100m以上は離れていて、普通に歩けばそれだけで1分以上の所要時間がかかりそうな距離感。できることがあるとすれば、京成線では4号車付近にエスカレーターがあるから、できるだけ移動距離を短くするくらいだろうか。
トータル6駅で10kmに満たない比較的小規模な路線ではあるが、改札口にはしっかりとした自動改札機が設置されている。ただ、既に磁気券は使用されておらず、那覇都市モノレールと同様にQRコード方式の乗車券が使用されているため、新たに設置された端末が実際の改札の役目を担っている。
また、QRコード式の乗車券に移行した関係で旧式の自動券売機も改札機同様に使用が休止されていて、食券の券売機のような自動券売機が設置されていた。QRコード方式を導入した2024年には顔認証乗車システムも導入していたりと、改札周りは割とハイテク。
ホームに上がると列車は出発を待っている状況。改札口には駅員さんがいて、切符を購入している乗客がいれば待つように業務放送が流れていた。日中は稼働しているのは1編成のみで、他の列車に影響がしないからできる芸当。
ちなみにこのご時世にして、また列車の見た目に反して、客室には冷房が設置されていない。その代わりに、駅の待合室は冷房が設置されているほか、夏場は車内に冷たいおしぼりや団扇などが設置されるそう。乗車時間は長くても10分程度だから耐えられないということはないが、流石に近頃の酷暑となるとなかなか堪える。なお、運転席には冷房が設置されている模様。運転席の窓が大きいからそれくらいしないと熱中症になってしまいそう。
ところでこの路線を運営しているのは、不動産業者でこの辺り一帯を開発している「山万」という会社。同社は千葉県のラジオ局であるBayFMでお昼のラジオ番組のスポンサーにもなっていて、同局を聴いているとなんとなく会社名を聴いたことがあるという方もいるかもしれない。
畑違いの会社が鉄道業に参入しようとしたから、開業に際してはなかなか苦労したようだが、今となっては開業以来無事故を継続している優良事業者として表彰もされている。
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同社は日本車輌製造と三井物産が開発した、いわゆる「新交通システム」で、「中央案内軌条式」に分類される仕組みの路線。愛知県の桃花台を走っていた路線が2006年に廃止された今では、国内唯一の路線になっているそう。
今回乗車した「コアラ3号」は同路線の中では最も新しい車両ではあるものの、それでも1982年の製造。製造から40年超が経過し、車両の外装もなかなか傷みが激しい状態。とはいえ国内外通じても他に例のないシステムとなると新型車両の製造もままならないという感じだろうか。それもあって近年では存廃に関する検討(バス転換)がされているような噂もちらほら聞こえてくる。
前述の通り車両には冷房が設置されていないから、天井は車両の大きさの割に高め。窓が全開になっているから走り出せばいくらか涼しい風が入って来るかと思ったが、この日はほとんど無風だったせいだろうか、殆どサウナの中にいるのと変わらないような状況だった。
路線はユーカリが丘駅を起点にして、反時計回りに1周するような格好になっている。「女子大」「中学校」「公園」と各駅の駅名はだいぶシンプル。ただ、「女子大」駅の周辺に開業以来大学が置かれたことはないなどといった、駅名と現況のミスマッチが起こっているところも。
ユーカリが丘駅の次駅、「地区センター」駅を出て「公園」駅へ向かう途中、進行方向左手には大きなイオンのショッピングセンターが見えてくる。これが「イオンタウンユーカリが丘」で、2016年に開業したんだそう。かなり遠くから見えるくらいには巨大な建物。
ユーカリが丘駅から2つ目の「公園」駅は同線唯一の行き違い可能な駅。朝夕は稼働する車両が複数になり、環状区間に入る列車と出て行く列車が行き違う場面もあるとか。
この路線、運賃は全線均一で「1乗車あたり」の運賃になっているからだろうか、車内の様子を見ていると、「公園」駅で住宅街方面に向かう列車に乗り、「地区センター」駅で降車していく人の姿もちらほら見られた。
「公園」駅から「女子大」駅にかけて、進行方向左手、環状線の内側方向は草木が生い茂っている。本来はここに大学を誘致する計画があったようだが、前述の通り今に至るまで大学などは置かれていない。一方で線路の外側は住宅街が広がっていて、内側と外側で同じ路線とは思えないような差異が生じている。
その後、線内では乗降客数が最も多い中学校駅、井野駅と経由して先ほどの公園駅に戻った時には編成の前後が反転し、終点のユーカリが丘駅に到着。次の運行までは定刻通りであれば5分ほどの時間があるが、乗客を漏れなく拾っていくから戻ってくるのも若干遅れ気味になり、忙しなく次の運行へ折り返していった。余談だが、1運行で同じ駅を2度通過するから、列車番号は1便に対して2つついている模様。
同社は2020年台に入ってバス事業の免許も取得していて、2025年の3月からは住宅街から勝田台駅までの路線バスの運行も開始した模様。鉄道と同じカラーリングの車両が線路沿いの車庫に停まっている様子も見られた。鉄道、バス共通の定期も販売されているとか。
車両は非冷房、老朽化は否めないものの、改札には顔認証システムを導入したりと積極的な取り組みも見られるユーカリが丘線。京成沿線を訪れる機会があった際にはちょっと立ち寄ってみるというのも面白いかもしれない。
というお話。